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2011年6月11日 (土)

剽窃批判は、ゴミにたかるハエ

NHKの深夜便のライブラリーにいくつか登録されていた。失礼だが新井満という名前は全く聞いたことがなかった。昨年から北海道の田舎で暮らすというから「物好きな人もいるなぁ」と思いながら聞いていた。ネットで調べると「千の風になって」という歌の訳詩・作曲者であった。
職業がら、ここ何十年も新聞は日経、雑誌はコンピュータ関連しか読んでいないため世の中のことに非常に疎くなっていた。流石に、秋川雅史が歌っている「この歌」は聞いたことがある。本業が電通社員というから才能のある人だと感心した。同じ●通でも妻の親父に「日通の子会社か?」と聞かれたのとえらい違いだ。
有名税なのかもしれないが、この歌の訳詩に対して剽窃批判があるらしい。
原文は、以下の通りで著作権がないとのことだ。

Do not stand at my grave and weep
I am not there; I do not sleep.
I am a thousand winds that blow,
I am the diamond glints on snow,
I am the sun on ripened grain,
I am the gentle autumn rain.
When you awaken in the morning's hush
I am the swift uplifting rush
Of quiet birds in circled flight.
I am the soft stars that shine at night.
Do not stand at my grave and cry,
I am not there; I did not die.

私のお墓の前で 泣かないでください
そこに私はいません 眠ってなんかいません
千の風に 千の風になって
あの大きな空を 吹きわたっています
秋には光になって 畑にふりそそぐ
・・・・・

歌の歌詞に訳したため原作からかなり離れているような気がした。原文には、「千の風」という文言が一度しかないのに、訳詩では何回も繰り返されている。訳詩というより創作に近い感じがする。
私には、なぜ、これが剽窃なのか理解できない。
原作者としたなら原作の著作権に対する剽窃批判であるが、英文を和文にして出版した同業の訳詩者からの厳しい批判には驚かされる。ネット上に批判者の訳詩もあったが、かなり内容が違う。原文が同じなのだから翻訳すれば表現が似てくるのは当然なような気がする。
だいたい、私みたいな横着者は、今日まで「私のお墓の前で泣かないでください」と「千の風になって」という箇所しか頭に残っていなかった。剽窃問題に興味をもって初めて全文の歌詞を読んだのが実態だ。つまり、私の場合には曲がいいから頭に残っていたので訳詩なんかどうでもよかったのだ。作曲者が新井満なのだから剽窃批判は言いがかりのような気がする。
以前の教会で個人的に知っている電通の人は、非常にいい人であったが多少自己中心的な物の見方をするのが気になった。また、海外出張(フランクフルト?)時に偶然となりのテーブルになった人が電通社員であったが話し方が不快だった。会社と距離を置かない印象が電通マンの特徴のように思った。
広告・宣伝業という職種は、個人レベルでも厳しい競争社会なのだろう。どんな世界でも数値がでないと商業的に成功とは言えない。新井さんは電通に務めていたから誹謗中傷する人と多少価値観が違うのかもしれない。商標登録の批判まであったが、私の勤め人社会では商標や特許を取得するのは当たり前の話で、批判は不適切なものだ。しかし、北海道への移住が人付き合いに辟易されたのならお気の毒なことだと思った。

参考
http://ja.wikipedia.org/wiki/
Do_not_stand_at_my_grave_and_weep

後日、新井さんの「千の風になって」を図書館で読む機会があった。2003年の第一刷本に「1000の風になって」を参考にしたことが長文で記載され、「1000の風になって」の作者にも敬意がはらわれていた。レイシストまで巻き込んだ無秩序な批判は、自分自身を卑しめる結果になる。昔、将棋界で升田幸三が木村14世永世名人に対して「舛田:名人など所詮はゴミのようなもの」と言ったことに「木村:じゃあ君は一体なんだ?」と言い返したところ『舛田:ゴミにたかるハエだな』と開き直った話を思いだす。

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