晩年に買った唯一のレコードが、「涙そうそう」
少年時代、北陸の田舎に住んでいた頃は、レコードをよく買った記憶がある。当時、聴いていたビー・ジーズ、モンキーズ、ビートルズ、ローリング・ストーンズ、オーティス・レディングなど、今でもカラオケで歌える曲が多い。大学時代は、解かりもしないのに、カッコをつけてクラッシックやイージーリスニング・ジャズなどのレコードを聴いた。もととも好きでもないジャンルだったのだろう、卒業後はめったに聴くことはなかった。社会人になってからは、忙しくてレコードなど聴く余裕もなかったため、中島みゆきの「迷い道」を買ったくらいだった。東京郊外に、エレクトリック・ラインと呼ばれるIT関連の大企業を結ぶ通勤電車が走る。昔は多摩川の砂利を運んでいた南武線のことだ。沿線の飲み屋は、N社やF社、T社などに勤務する社員が多く、安心して会話もできない。そにため、人目を忍んで立川寄りの矢野口という小さな駅近のRチェーンへよく行った。2002年ごろ、有線放送で「涙そうそう」が店内に繰り返し流れていた。飲みながら聴いているので内容はよく解からなかったが、寂しそうな唄だった。隣の卓で、N社と思われる若い社員の一団が、富士ゼロックスなどに入るためにN社に入社したわけではないと泣きながら飲んでいた。確かに、IT産業に将来を託してたのに、コピー機会社などに転社させられるなど可哀想な話だと同情した。しかし、翌年F社にいた私も同様の理由で移ることになった。勤め人が長かったせいで、サラリーマンの悲哀は承知していたが、付加価値もないアセンブリービジネス事業部の幹部連中が主導した構造改革で売却されることは、不愉快千万だった。そして、晩年好きになってわざわざ買った唯一のレコードが、夏川りみの「涙そうそう」だ。
ただ、私を不快にした人たちが、何故か、いつも酷い不幸に遭遇したことを思い出すと少し心配になる。
http://www.youtube.com/watch?v=76cBt4-1c8A
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