イカの鉄砲焼き
富山湾は、日本海に面していて暖流の対馬海流と寒流のリマン海流が交差している。そして、湾の水深も深いため魚の豊富さで知られている。今年は、氷見の寒ぶりが安かったせいで、飽きるほど食べた。秋刀魚や鰹のように、暖流にのって来る魚に比べ身がしまっていて好きだ。最近、行きつけのスーパーの店先に、富山で取れたイカが並んでいる。富山産のイカは身がしまっていて、刺身もいいが、鉄砲焼きにして食べると美味しい。関東では、あまり聞きなれない料理だが北陸の田舎では一般的だ。酒の肴に最適だ。作り方は、いろいろあるのだろうが自己流でやっている。イカの中身を抜いてきれいに洗ったあと、イカの胴部分とイカの足をそれぞれ軽く熱湯にとおす。イカの足を細かく刻み、ねぎをみじん切りにする。そして、ねぎを湯がいたあと、それらを味噌と混ぜあわせる。この混ぜ物をイカの胴部分に詰め、楊枝でイカの口を止める。少し、冷蔵庫で寝かせ、食べる時に焦げ目がつく程度にフライパンで焼く。軽く湯通ししないで、生のイカを直接焼くと焦げ目が付きすぎたり、形が崩れたりする。実は、自己流といっても、田舎にいたころ行商の魚屋の「みっちゃん」というお姉さん教えてもらった。小さい頃、遊び相手がいない時に、「みっちゃん」に頼んで魚をさばかせてもらった。私のさばいた「みぎす」など売り物にはならないが、「みっちゃん」が後から手を加えて売りさばいた。その「みっちゃん」は青江三奈のファンで、当時としては珍しく毛を赤く染めていた。面食いだったせいで、背の高い二枚目の男と結婚した。中学を出た後、真面目に魚を売りあるいて家まで建てたのに、甲斐性がない男と一緒になったおかげで競馬・競輪にはまり、最後は家もなくし借金を作って他県に行ったという話しだ。晩年はその男にも捨てられ、酒に溺れていたという噂だった。こうみると、男はつくづく外見より中身が大切だと思った。傍から不釣合いなカップルだと思えても、女性は男の内面を見ているのだろうと納得してしまう。
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