損して休むは上の上
日本株の上げ下げを眺めていると、投資姿勢が朝令暮改になってしまう。午後の日経平均の下げを見て、31日(金)に全ての日本株を売り払った。その後、ニューヨーク市場は、ダウ工業株30種平均は前日比▼149ドル安で引けた。これを受けて株安と新興国不安による「逃避通貨」としての円買いで、2月3日月曜日の東京市場は101円台から始まる可能性もあるという。米国10年債の利回りが2.65%まで低下しているから円高局面の再現?と不安になってしまう。1月の新興国からのマネー流出は、株式ファンドで122億ドル、債券ファンドで46億ドルに達したというから、米国の量的緩和縮小政策の影響は計りしれない。そう思いながら、愚者の頭の中で整理してみた。
米連邦準備制度理事会FRBは、毎月、米長期国債を450億ドル(4.7兆円)分、住宅ローン担保証券を400億ドル(4.2兆円)分、合計850億ドル分の金融資産を市場から買い上げ、大量のお金を流していた。それを、1月から合計の購入額を、100億ドル分少ない750億ドル(7.8兆円)に縮小し、2月からは650億ドル(6.3兆円)にすると決定した。一方、日銀は、マネタリーベースが、年間約60~70兆円に相当するペースで増加させ、2014年末までに2倍の270兆円にするという。FRBが、QE1(1.7兆ドル)、QE2(0.6兆ドル)、QE3(2012年9月~1.4兆ドル)と増額した合計金額は、3.7兆ドル(372兆円)となる。英フィナンシャル・タイムズ紙によると「日銀の金融緩和の効果はFRBに遠く及ばない。日銀が世界市場にFRBと同じ影響を与えたければ、FRBの2倍の金額の策を講じる必要がある」と指摘する。つまり、日本の金融緩和策があっても世界的には、FRBの緩和縮小のほうが大きく影響するようだ。新興国不安にばかり気を取られていたが、日経平均は1月に▼8.5%下落した。損した指標のベンチマークに日経平均を使うのは、いかがなものかと思うが、愚者の損失が日経平均より少なかったので、「無念さ」は少し緩和された。FRBが2月も100億ドル更に減らすとなると、先取りしてカントリーリスクの高い国から資金が逃げていくことは理解できる。昨年、外国人は日本の株式市場で15兆円買い越し、日経平均が5割も上昇した。東京証券取引所によると、日経平均が300円以上下げた1月20-24日の週の個人は3941億円の買い越し、海外勢の売越額は2330億円となった。1月に入り、海外投資家は1月24日までの3週間で合計4294億円売り越している。メリルリンチが毎月行う世界のファンドマネジャー調査では、1月の日本株の配分状況はプラス26%と13カ月連続でオーバーウエートだが、前の月からは10ポイント減少したという。新興国中央銀行の相次ぐ利上げにもかかわらず、新興国通貨安の流れが止まらない。インド準備銀行のラジャン総裁が、米国の量的緩和縮小政策について、「他国に与える影響も考慮すべし」と批判するように、先が未知の世界のようだ。日銀の金融緩和があっても、米国の量的緩和縮小政策で日本の株式市場が米国市場に大きく振り回されるような気がする。「損して休むは上の上。」「疑わしきは何もするな。」という株式相場格言を思い出す。
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