経済的な損得より終末の美学を選んだ
OB会の事務局をしていると、勤め人を辞めてからも世の中を知ることができる。今朝も、学生時代の友人からの返事に彼の近況が綴ってあった。「私の現状を報告しますので、出席された方へも伝えて頂けたら幸いに存じます。」という挨拶に続いて、「37年間勤めた全農C県本部を定年退職し、・・・・退職した人を再雇用することが実施されています。・・・9月まで勤務しましたが、半年間の契約が満了した時点で退職しました。 現在は、小さな会社に10月から勤務しています。・・・労働環境は大変厳しい状況となっています。実際のところ、60歳を過ぎてこんなに忙しく働くとは思ってもいませんでした。・・」と泣きが入っていた。愚生の友人は、学生時代も忙しいというのが口癖だったため、内容を多少割り引いて読まなければならない。しかし、のんびりとしたC県の農協職員だったというから、準公務員のようなもので、自由主義経済の厳しさを知らなかったのだろう。そして、年老いてから、同じ会社に継続勤務する惨めさは勤め人をやった者にしかわからない。そういうこともあって、年金を受給しながら小遣い稼ぎに働くために、小さな会社で職を見つけたのだろう。ただ、還暦過ぎた職員を新たに募集する会社には3Kが付きまとう。勤め人をしていた愚生は、過去に同様な先輩たちを多く見てきた。最期の職場をどう締めくくるかは、人生の達成感にとって重要だ。愚生は、経済的な損得より終末の美学を選んだ。退職後は、多少金銭的な不安を覚えたが、人に使われる身分に比べ、精神的には自由に生きられる。自身の勤め人時代を思い浮かべながら、彼の心境が綴られているメールを読み取った。
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