人口減少時代に郊外拡散を止める施策

LRTは世界各所で普及しているが、日本では富山市LRT以外は実現せず、ようやく宇都宮で計画が進んでいる。LRTの主な反対理由は、「大通りを塞いで自動車交通の邪魔になる」「LRT導入で路線バスからの乗り換えを強いられ、不便になる」「(宇都宮市の場合)400億円もの巨費を投じて運行しても採算が合うはずがない」などが挙げられている。また、海外LRTでは、公共交通に独立採算が求められず、運営費にまで税金が投じられていることを指摘する。税金を投じてLRTを普及させることは、モラルハザードを招くというが、道路拡幅などに、多額の税金が使われている事実が忘れられているようだ。反対派からは、車社会からの脱却や新しい公共交通政策のあり方について、全く将来の展望は語られない。ところで、愚生の育った富山市の路面電車は、5~10分間隔で、乗車が少なくてもシャトル的な運行がなされている。最長でも10分待てば、電車が必ず来るため日中はバスより早く正確に目的地に行ける。富山の路面電車は、富山駅と中心街を経て南富山を結ぶ。また、富山駅から富山大学、富山駅と岩瀬浜(富山港)をLRTで結ぶためほとんどの旧市街地は、路面電車で結ばれている。東京では、都電が地下鉄に移行した。一方、地方都市では、車社会の到来で路面電車が廃止になった。富山市でも廃止になった路面電車の路線は多い。しかし、古くから敷設された路線には、多くの高校や大学が効率的に点在していたため、多くの路線は(市の補助金はあるが)採算性がよく廃止を免れた。そして、今日の高齢者社会を迎えた。これからの先進都市は、拡散から集中というコンパクトシティ機能が求められ、その中核をバリアフルーのLRTが担う時代となった。モノレールや地下鉄は、バリアフリーからはほど遠く、あくまで車社会を前提にした公共交通だ。高齢化社会の進行や、ガソリン価格の高騰によって、これまでのように車の所有自体が難しい状態になってくれば、出来る限り多様な公共交通機関を使えた方が便利だ。宇都宮LRTは、宇都宮市と隣接する芳賀町の東西約18kmを結ぶ計画だ。LRT事業は軌道部分を宇都宮市や栃木県などが公共事業として建設し、運営主体と分ける上下分離方式をとる。昔からあった路線を使う富山LRTと、今から新規に建設する宇都宮LRTを同列に論じることは比較にならないという意見はある。しかし、富山市のJR富山港線は、乗客減→列車本数削減→乗客減→列車本数削減・・・という悪循環を断ち切って再生された路線だ。宇都宮LRTの反対者は、ヨーロッパの路面電車(LRT)は観光用だとの主張だが、ヨーロッパの多くのLRTは通勤や通学、中心市街地への買い物にも使われている。宇都宮市LRT計画が、妥当かどうかは愚生に判断はできない。東西南北に市街地が近代的に整備された富山市と違い、宇都宮市は一歩主要道路を外れれば袋小路のありさまだ。確実に言えることは、高齢化社会を迎えた今、個人の車保有が難しくなる中、コンパクトシティ実現への取り組みが早期に必要だ。
| 固定リンク
「旅行・地域」カテゴリの記事
- 政府の観光促進策「全国旅行支援」(2022.10.11)
- 岸田首相の正しい判断だと支持したい。(2021.11.29)
- 政府には「しっかりしてくれよ」と言いたい(2021.02.24)
- 北関東3県がワーストリレー(2021.01.12)
- 中途半端な対策でよいのだろうか(2020.12.05)
「日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事
- これで円安・ドル高が進む(2023.02.06)
- 政治家を恨みたくもなる。(2023.02.01)
- 投資家は米金融当局と闘うな(2023.01.31)
- FRBの過去の実績から判断(2023.01.30)
- 新しい日銀総裁の名前(2023.01.28)
コメント