親思う心にまさる親心
昨日、東京駅から北陸新幹線に乗った。平日だというのに、老齢のツアー客で満員だった。気候も涼しくなったため、老人にとっては旅行にいい季節だ。「かがやき」乗車というから、立山黒部アルペンルートではないようだ。長野の先は、富山駅と金沢駅にしか止まらない。だぶん、金沢・能登・福井あたりまで足を延ばす旅行だろう。愚生の目的は、介護施設にいる実母と義母への訪問だ。実母のほうは、相手が遠慮しないためだろうか、愚生と関係のない話を機関銃のように話していた。途中から、話の筋があまりにもわからないため質問すると、愚生の知らないご近所の話だった。田舎を出てから四十数年も経つと、すっかり地域のことが、わからなくなってしまう。愚生が酒好きなのを知っていて、アサヒスーバードライが3本買ってあった。「親思う心にまさる親心」という言葉をしみじみと思い浮かべた。放蕩息子であっても、親にとってはかけがえのない者なのだろう。ビールを飲んだせいか、二軒目の義母への訪問時は、相手が遠慮がちなこともあって、間を持たせるために愚生が話し通した。耳の悪い義母に、どれだけ通じたか疑問だ。ただ、訪問者が少なくなり、変化の乏しくなった老人には、愚生のようなものでも嬉しいのだろう。そう思うと、しみじみと北陸新幹線の開通で便利になったありがたさが身に染みる。
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