対面販売できる顧客はいない
大阪地裁で行われた、三井住友銀行が被告となった損害賠償訴訟は、原告の重度認知症女性の全面的な勝訴だった。認知症の高齢女性は、要介護度は2というからかなり重症だ。三井住友銀行の行員は、「銀行の預金は利率が低いので、MMF(債券中心の投資信託)のほうが有利だ」と投資を勧誘してきた。愚生が思うに、MMFの推奨は妥当だと思うが、手数料が高い銀行からの購入などはしない。そして、2007年に、不動産投資信託証券のグローバルREITオープン6000万円分を借り換えて買わせた。これがサブプライムローンで大幅な評価損となり、分配金を相殺した損益は大幅にマイナスとなり、損失は約2000万円に達したという。三井住友銀行内部では、「コンタクト履歴」という書類で、経緯を管理しているという。それには、認知症にもかかわらず、明晰に話しているかのように記載されていた。判決文には、医療機関の診断からみて、原告が「本件商品の各種リスクを理解することができる状態であったとは考え難く」として、「このような状態にある原告に本件取引を勧誘したことは、顧客の意向と実情に反して明らかに過大な取引を積極的に勧誘し、適合性原則に著しく逸脱したものというべきである」と断じた。また、被告のコンタクト履歴については「女性の発言内容等について虚偽の記載をするなどその信用性は乏しい」と言及。そして被告に対し、原告へ2055万円の支払いを命じる判決が下った。その後の控訴審で、三井住友銀行は2400万円を支払うとして和解に至った。この事件で、愚生が思うには、銀行員が一概に悪いとは思わない。三井住友銀行が販売手数料目当てに、海外REIT投信を知識もない顧客に買わせる営業姿勢だ。ネット証券で売買すれば、手数料が0円のものもある。一方、銀行の対面販売は、3%+消費税が一般だ。6000万円なら、180万円も購入時に銀行に手数料が入る。銀行は、濡れ手で粟で儲かる。今回、認知症患者と言うが、海外REITなど病気でなくとも容易に理解できる投資ファンドではない。ましてや、リーマン・ショックの前であれば、不動産ファンドの危険を知る由もない。そもそも海外REITの扱いにくいのは、利回りより為替レートの変動が損益に大きく影響する。不動産利回りなど数%しかないが、為替が20%も円安に振れれば、円換算で一年で30%も上昇する。愚生に言わせれば、6000万円⇒4000万円約33%の損失だから、この時期としてはそれほど大きいとは思わない。DJ Equity All REITは、指数で350⇒90と約75%くらいまで下がっている。一方、国内REITであっても、2500⇒1000くらいだから約75%下落。原告の購入時期は、円高と不動産ファンドの暴落で、踏んだり蹴ったりだった時だ。問題は、このリスクを説明しても相手が理解できるかだ。こう考えて、対面販売できる顧客を捜せば、だれもいないことになる。要するに、銀行がこのような商品を販売することが問題だ。証券会社であれば、うさん臭い株屋だと初めから警戒する。ただ、原告は一時的に損失を被ったと訴えたが、長期に保有していれば、少なくとも今まで持っていれば、十分利益が出たはずだ。投資は、利益の生まない投機ではない。国内REITなど、都心回帰の中で、長い目で安定な利回りで分配されるファンドを選択すれば、リーマン・ショックのような惨事がなければリスクは少ない。
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