20秒間で、5億円も溝に捨てた
JAXAは15日、超小型衛星を載せたミニロケット「SS520」の打ち上げに失敗した。SS520は全長約9.5メートル、直径約50センチと電柱ほどの大きさで、機体製造と打ち上げの費用は約5億円の格安ロケットだ。民生品を使って低コスト化を狙っていた。大型の人工衛星を打ち上げる主力ロケットのH2A(53メートル)や、イプシロン(26メートル)と比べると非常に小さい。SS520は発射後の約20秒後に情報が途絶えた。失敗の原因は、まだ特定できないが飛行中のデータを解析し、原因を究明するという。今回、民生品を活用して安く作ったというが、宇宙空間を模した環境で、民生品をどれだけ実証実験を積み重ねてきたのか。民生品は、製品の故障率を表すFIT【Failure In Time=[故障素子/(全素子数掛×稼働時間)]×10の9乗】は一般的に高い。例えば、使用されている半導体製品が、100FITの製品の場合は、稼働1千万時間あたり平均1回故障する。この確率から、100万個製造すれば、稼働100時間あたり1個が故障することになる。基幹通信システムに用いられる半導体レーザの場合などは、故障率で1~10FITだ。また、各種LANなどに用いられる場合は、故障率で500~1500FIT程度だ。一方、民生機器に用いられる低価格の半導体などは、用途やメーカーによりかなりのバラつきがある。つまり、民生品は選別保証されている部品に比べ、価格は安いがFIT数の保証値は悪くなる。今回の場合、ロケットからの通信が途絶えたという。つまり、打ち上げ時の重力・振動などで、通信機器が誤作動や壊れた可能性が高い。いくら、民生品での試験や信頼性の確保で宇宙分野に参入する知見が得られたといっても、打ち上げに失敗したのでは説得力はない。現在、一度しか実験していないため打ち上げ成功確率は0%だ。20秒間で、5億円も溝に捨てたことになる。ロケットの通信機能などは、制御において基本的機能の部分だ。こんな機能は、実際に打ち上げをしなくても検証できる箇所だろう。この失敗事例からわかることは、民製品の車載搭載機器より遥かに信頼性が低いということだ。
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