住宅関連のJ-REITは避けるべきだ。
昨日に続いて金利のことを書くが、最近は金利低下で一般人による不動産投資ブームが続いているらしい。愚生が30歳前後だった頃も、土地バブルでワンルームマンションの建設が盛んだった。そして、それが地方に飛び火して、今度はリゾートマンションブームとなった。当時、マルコーやダイカンホームなどが競って個人向けのマンションを建設や販売をしていた。「夏草や兵どもが夢の跡」という感じで、越後湯沢などには今もその痕跡が残っている。そして、人が住んでいないような高層マンションが二束三文の値段でも売れずに放置されている。昔話になってしまうが、税制が変更される前は土地を購入した金利まで経費として計上できた。そのため、節税を考える多くのサラリーマンが税金還付目的で購入した。「サラリーマン大家」などという言葉もその頃できたのだろう。昨今の異次元緩和では、国債購入という資金運用の選択肢はない。残るは、株や不動産投資になってしまう。節税目的を含むならば、投資信託やJ-REIT経由ではなく実物の不動産投資となる。国内で不動産投資を行う場合、銀行の「アパートローン」という種類の融資を使う。融資基準は、担保となる不動産の資産価値と借りる人の属性(収入や余裕資産)の両方で量られる。担保物件がよくても、定期収入のない人は融資を受けにくい。ただ、すでに優良物件を運用している実績のある人には、融資が通りやすいという具合だ。マイナス金利まで導入されると、銀行も資金の置き場所がなくなった。そして、貸し手競争に陥り、銀行の融資審査が甘くなった。その結果、国内銀行の不動産向け融資残高は、2016年9月末時点で69兆6698億円と統計を遡れる1970年以降で最大となった。つまり、1990年の土地バブル期より多くなった。このうちアパートローン残高は前年比4.5%増の22兆224億円だ。当然、郊外を車で走ると、入居者のまばらな新築アパートが目立つようになった。たぶん、空室率はかなり高くなっているだろう。その昔、土地バブルを弾けさせた一因は、1990年に大蔵省から金融機関に対して行われた「総量規制」という金融政策だった。日銀の三重野総裁は、公定歩合をいっきに引き上げたため、貸出金利は変動金利で8%以上となった。総量規制の貸し剥がしで、マンション建設業者や販売業者は資金が回らなくなった。一方、購入者側も高金利で買い手がいなくなった。今から思うと、大蔵省も日銀総裁も先々を考えない猿知恵としか言いようがない政策を行った。この結果、ダイエー、国土開発(西武鉄道)、セゾングループ、秀和、麻布自動車、マルコー、ダイカンホームなど多くの不動産関連会社は倒産した。個人でも、借り過ぎで自己破産した人も多い。愚生の友人でも、1990年前後に買い急いで異常な高値で自宅を購入した人は多い。一度の購入失敗が、一生の問題として生き方に影響した人もいるだろう。ところで、今年になって、金融庁がアパートローンへの監視を強めているという報道が伝えられる。今回は、あの総量規制ほどはっきりとした動きではないが、思い返せば当時とよく似ている。引き締めで金が回りにくくなり、資金ショートした投資家や不動産会社が手持ち物件を投げ売りしだしたらどうなるか。融資締め付けは、時間を経って不動産市場に効いてくる。ここで長期金利の上昇が伴えば、一気にバブル崩壊へと突き進む可能性もある。金融庁の引き締めで、潮目が変わったようにアパートローン審査は厳しくなってきたという。こう考えると、間接投資とは言え、住宅関連のJ-REITは避けるべきだ。
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