これ以上金融緩和や円安が進むとは思えない
昨年九月に、日銀は従来の「量的・質的金融緩和」、「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」を強化する形で、新たな金融緩和の枠組みである「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」という施策を導入した。つまり、金融政策の軸足を国債買い入れ額などの「量」から「金利」へと移した。市場の長短金利操作のためだ。長期金利は、10年物国債金利が概ね現状程度(ゼロ%程度)で推移するように、長期国債を買入れる。今回、前日に長期金利の指標となる新発10年物国債利回りは約1年ぶりとなる年0.115%まで上昇した。その金利上昇を押さえ込むねらいで、日銀は午後12時30分に5年超10年以下を対象に、指定した利回りで国債を無制限に買い入れることを通知した。その結果、長期金利も0.100%まで急低下した。トランプ米大統領の経済・財政政策に対する期待が根強く、米国長期金利市場は高止まりしている。米国の動きを映して、当然日本の長期金利も上昇基調とみられる。それを日銀が、今回、無理やり国債の買い上げて抑えようという政策だ。いずれにせよ、トランプ大統領は日本の円安批判を繰り返している。そうなれば、円安の背景にある日銀の金融緩和にも圧力がかかり、長期金利をあからさまに抑え込むことが難しくなる。そこで、愚生などはすぐに「風が吹けば桶屋が儲かる」という発想になる。長期金利の上昇は、借金をレバレッジにした投資には逆風だ。長期に資金を借り入れる不動産投資などは、利回りが悪くなる。借入金利の上昇で、アパート投資の利回りは低下し、国内REIT指数の下落要因ともなる。今回、日銀は7000億円を超す資金介入で長期金利の上昇を抑えた。しかし、「金利はコントロールできる」と日銀が思うほど簡単ではなかった。こうした日銀のオペ市場介入を乱発すれば、国債市場をゆがめてしまう。そして、資金投入による損失から、日銀の財務リスクがつきまとう。日銀と市場との思惑のすれ違いが続けば、日銀の金利操作の困難度は増す。金融は世界規模で繋がっている。米国金利の上昇が進めば、米債購入からドル高になるのは当然だ。そうすれば、米国からの円安批判につながる。いつまでも、力ずくでの金利抑制など政治絡みで無理なことだ。そう考えれば、これ以上の金融緩和や円安が進むとは思えない。余剰資金は、逆回りした時にはミニバブルの崩壊という痛みが伴う。愚生のような予見できない者は、風林火山に記された、「動かざること山の如し」という気で市場をみよう。
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