株価ありきで説明はいつも後付け
株価が高いか安いかを判断する指標として株価収益率(PER:Price Earnings Ratio)がある。株式の投資価値を判断する際に利用される尺度の一つだ。株価÷一株当たり利益(EPS)で算出される。株式評論家が、株価を論評する時によく言及する。日本のバブル期には、PERで株価を論評することができないほど大きな値になった。そのため、実質株価純資産倍率(Qレシオ)で株価を論評していた。Qレシオは「Qレシオ= 株価 ÷ 1株あたり(純資産+含み資産)」から導き出される。PERで利用されている純資産は、貸借対照表に帳簿価格で表されている。しかし、土地などの時価は購入時の簿価(帳簿価格)から大きく乖離している。特に、土地バブルの時代は、一坪100万円する土地でも、終戦直後に千円(簿価)で買っていれば、帳簿上は千円と記載される。そのため、実際の価値と大きく違う。このときの時価と簿価の格差を、上記の式で「含み」資産という。この結果、土地の値段が上がったバブル期には、Qレシオが1を下回る企業が多く出た。こういう問題を解決するために時価会計が2001年3月期決算から導入された。これによって、期末時点における企業の財政状態を正確に公表できるようになった。土地などは、買い手がいればの価格だから当てにならない。しかし、上場された保有株は、金融資産として正しく評価される。企業が資産価値を正しく表すには、土地・建物などの不動産を持たずに、借りて賃料を払ったほうが正確になる。土地や償却された建物など、買い手があれば値段が付く資産だ。しかし、売れなければ、不(負)動産でしかない。愚生の独りよがりの考えかもしれないが、これも土地値が下げ止まらない一因かもしれない。長々と書いたが、言いたかったことは証券マンが株価が高い安いといっても、信用ならないということだ。また、株価を云々するには、PERから市場金利というパラメーターは無視できない。金利調整後のPERであれば、米国株はバブルではないという。「史上最高の投資家」と呼ばれるウォーレン・バフェット氏(投資会社バークシャーハサウエイ社のCEOかつ筆頭株主)は、「米国株はバブルの領域にない。金利と比較すればまだ割安な方だ。長期金利が7-8%程度に上昇したらバブルを警戒すべきかもしれない。米経済のダイナミズムは顕著で、暫くはいかなる大統領のもとであっても順調に推移する」などと述べている。金利調整後PERとは、「予想PER×長期金利」であらわされる。これが正しい指標なら、米国長期金利が0.26%のいま、過去25年の算術平均(0.76倍)を大きく下回る0.46倍に位置している。即ち、長期金利を加味したバリュエーション(予想PER)面からはバブルに至ってない。日本のバブル期はQレシオ。今回は金利調整後PERという指標で説明する。株価が上がり、従来の指標で説明がつかなくなると、新たな指標を持ち出す。結局、株価ありきで説明はいつも後付けだ。そう考えれば、正しい物差しなどないような気がする。
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