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2017年6月20日 (火)

解体費を売り主が支払うマイナス価格取引

631soka1  金利低下が後押しするのか、都内だけでなく北関東や北陸地方、果ては島根県までアパート建設が盛んだ。少子高齢化は進むが、労働賃金は上がらない。そのせいか、自宅を購入する人が減っている。住宅メーカーは、借り手がいない銀行と二人三脚で地主を説き伏せてアパート建設をしているのだろう。これから人口減少時代を迎え、不動産価値の格差は顕在化してくる。金融資産は動産と呼ばれる。不動産といえば、換金性が悪い資産という意味だ。最近は、資産として良い不動産を「富動産」、マイナス資産となるものを「負動産」というらしい。日本には住宅用地が全国の市街地に96万戸分、東京都には26万戸分あるという。そして、その多くが東京オリンピック後の2022年に一斉に市場に放出され、新築マンションや一戸建てが建設される。そうなれば、空き家が大幅に増大する。北関東の郊外を車で走れば、営業を停止したガソリンスタンドが放置されている。こういう物件は、売り主に解体費が必要なため「マイナス価格」になる物件だ。アベノミクスによって大きな恩恵を受けた不動産は、千代田区、中央区、港区などの一握りの物件だ。そういう超一等地はオフィスが林立し、不動産投資信託(REIT)やファンドのマネーが流入した。一方、それ以外の不動産は全く恩恵を受けていないどころか、むしろジリジリ地価が下落を続けている。価値のない不動産は所有しているだけで、固定資産税や維持管理費が必用だから「負債」と見るべきだ。高度経済成長期に造成された、都心から30~40キロ圏内にあるベッドタウンなどは、当にそうだ。愚生が若い頃は、住宅ローンは8~10%もの高金利だったが先を争うように買われた。年金者世代は、今も鮮明に記憶があるだろう。それから40~50年が経過し、建物は老朽化、住民も年を重ねた。同時に少子化が進み、都心回帰もあって、郊外立地の一戸建てニーズは減少した。そういう投資物件を持っているなら、少しでも早く処分して換金化すべきだ。愚生は、資産管理には資産の透明化が重要だと思う。値段を付けても売れない物件は、資産価値がない「負債」と見るべきだ。そして、売ることができない自宅は、固定資産税が家賃だ。同様に修繕費が管理費だ。売却ができない終の棲家は、資産と見なすべきではない。思い出せば、愚生が初めて住んだ公団住宅は「白亜の殿堂」と呼ばれた。当時は、庶民の憧れの的だった。その公団住宅も、今では時代遅れの「負動産」となってしまった。国の推計によれば、2050年には約25%、3300万人が減少し、日本の総人口は9515万人になるという。人口減少と同時に生じる少子化・高齢化で、住宅価格は大きく下落する。日本の住宅価格は、2040年には2010年比で46%下がるという。つまり、2010年に3000万円で30年ローンを組めば、払い終わった時の住宅価格が新築でも1620万円だ。中古の築30年物件となれば、資産価値はないに等しい。そう考えると、長期のローンで住宅を取得するメリットはない。今、アパート建設に1億5千万円借りて、25年の住宅ローンを組んだとしよう。25年後の2042年には、日本の人口は3000万人弱も減少する。乱暴に言えば、LTV(Loan to Value=負債額を物件価格で割って算出)が50%以上では、ローンを払い終えるまでに大規模な改修をしなければ上物は無価値だろうから、解体費用を差し引けば資産価値が無いに等しい。更地があってもアパート建設などせずに、売り払った方が賢明だ。仮に、今土地が売れないから建設するというのなら、25年後は絶対に売れないだろうから、今既にマイナス資産となっている。

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