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2017年7月21日 (金)

IT分野では絶対ということはない

Cloud_computingsvg 電子版記事に「IBM、アマゾンが追い込む25年ぶりの苦境」という見出しがあった。愚生のような、日本のコンピュータ産業を、黎明期から見てきたものには隔世の感がある。IBMの2017年4~6月期決算で売上高が前年同期比4.6%減と、21期連続で四半期の減収が続く。次世代ITビジネスの本命であるクラウドで、米アマゾン・ドッド・コムに完全に主導権を奪われたことも理由だ。クラウド化は昨今始まったわけではない。個人や企業が単独でサーバを構築し、管理するには負担が大きい。昔は銀行各社が系列会社などに、自社システムの開発・管理部門を抱えていた。クラウド化が叫ばれる以前に、システム企画部門を除いて、構築を手掛ける非効率な系列システム企業を他社に売却して経費削減を行った。クラウド化が進むにつれ、顧客関係管理(CRM)ソリューションを中心としたクラウドコンピューティング・サービスを提供するセールス・フォース・ドット・コム(salesforce.com)などが台頭してきた。IBMは企業内に構築するサービスをプライベートクラウドという概念で自社システムでの囲い込みを続けた。そして、新たに起こったインターネット経由のクラウドコンピューティングをパブリッククラウドとして定義した。しかし、これまで似た仕組みがなかったと言えば1970年代から存在した。それは、各地の金融機関が接続している国際決済機関や国際銀行間通信協会が事業者となって接続者へ提供しているサービスだ。また、クラウドサービスとは呼ばないが、レンタルサーバーのホスティングサービスなどは、クラウドサービスの概念そのものだ。歴史的なコンピュータの利用形態の変遷を思い起こせば、以下のようになる。
1.メインフレーム全盛期の集中処理
2.オープンシステムよるクライアント・サーバの分散処理
3.ネットワーク中心の集中処理
4.サーバを意識しないクラウドコンピューティング
ウォーレン・バフェット氏が見切っただけあって、決算後にIBM株は4.2%安と大幅に下落した。決算期ごとにIBM株は急落する。昨今の成長事業のIT分野といえば、クラウド、モバイル、セキュリティー、ソーシャル・ネットワーキング・サービスなどだ。米アマゾン・ドッド・コムが提供するアマゾン・ウェブ・サービスは、世界190カ国でのクラウドサービスだ。2016年の売上高は前年比1.5倍の122億ドル、営業利益率も25%。アマゾンはクラウド市場の30%超のシェアを占める。10%未満のIBMに大差をつけている。IBMが利益の出るビジネスに注力しているといっても、成熟分野の事業では、お先は真っ暗になる。IBMは、業界の秩序を破壊・変革してきたアマゾンの新たな分野の犠牲者なのかもしれない。最近は、IBMが得意としていたメインフレーム、ソフトやコンサルティングサービスなどがなくても、クラウド上で安価に一定のITリソースをそろえることができる。コストは従来の数分の1ともいわれるから、この分野での価格崩壊は既得権益者のIBMには大きな打撃だ。当初は、アマゾンのクラウドサービスなどは、データ速度やセキュリティーなどに問題があっただろう。しかし、2013年にアマゾンが、CIAからのクラウドを受注したあたりから見直された。同案件でアマゾンはIBMより高い値段で応札したが、性能と信頼性で評価された。これにより、IBMが得意とする金融・政府機関などがアマゾンに雪崩をうつように流れ始める。そして、IBMの凋落が始まった。クラウド事業は、アマゾンだけではなく、マイクロソフト、グーグル、セールス・フォース・ドットコムなども、各社の強みを武器にクラウド事業を強化する。共通するのはIBMが抱える従来型ITサービスからの顧客の略奪だ。愚生の芽には、クラウド時代のIBMは新興勢の草刈り場になっているかのようだ。アマゾンと言えば、一般消費者は、ネット販売や個人が販売できるマーケットプレイスなどで知っている。一株1000ドル越えのアマゾンの株価を見れば、投資家がいかに評価しているかがわかる。ただし、愚生はアマゾンに投資する気にはなれない。アマゾンの事業領域は非常に広くて掌握できないからだ。少なくとも、IT分野では絶対ということはない。なぜなら、あれだけ盤石だったIBMが傾くなど考えられなかったからだ。

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