構造改革を決断することは容易でない
今朝のニュースに、ニコンは中国のデジタルカメラ工場を閉鎖という一報があった。ニコンは半導体製造装置やデジカメ事業の不振を受け、2016年中期経営計画を撤回し、構造改革路線に転じる。構造改革とはもっともらしい言い方だ。厳格に言えば、従業員の首を切ってリストラをするという意味だ。スマートフォン(スマホ)の普及で、コンパクトデジタルカメラ(コンデジ)市場はピーク時の1割程度まで減少しているという。結局、カメラの生産拠点の仙台市やタイは温存し、生産効率の悪い中国(約2500人)でのコンデジの自社生産から撤退する。販売は、外部委託などからOEM供給を受けて続ける。ニコンのコンデジの販売が苦戦していることは当たり前だ。なにも、ニコンだけの話しではない。ニコンの戦略は5年以上も前に、富士フィルムが採用した撤退方法だ。愚生に言わせれば、今頃になってコンデジ工場から撤退宣言をするのか。経営決断が遅すぎる。生産量が十分一の赤字になってからの撤退はバカでもチョンでも決断できる。本来なら、赤字になる前の中長期戦略の中でも判断できたはずだ。首が回らなくなってからでは、減損処理の規模は大きくなる。止血は、早期に行うべきだった。精密機器会社のリコーもインドリコーの債務保証を特損で処理するという。どこの日本の会社も動きが遅いと痛感させられる。外部から見れば、何をやっているのかと叱責されるが内部で決断することは容易でない。愚生も、勤め人時代は事業部の開発・設計部門に属していた。製品を安く作り、固定費リスクを避けるには、外部委託が一番効率がよい。しかし、これを実現するには、しっかりした販売チャネルを抑え、他社が真似をできない製品の差別化技術が必要だ。そのため、ネットワークを隠れに蓑に複雑なアプリケーションプロトコルを導入し、他社が参入できないようにして顧客の囲い込みを図った。こうすれば、ハードをすべて外部生産しでも、ネットワークシステムで他社を排除できる。だから、社内では非効率なF社工場など潰してしまえばよいと主張していた。しかし、生産部門の首を切って効率化するなどという愚生の考えは、生産部門の幹部社員が受け入れるはずはない。サラリーマンである以上、赤字の部門からは自分達が生き残ることが前提の施策しか出てこない。要するに、赤字部門に赤字縮小の大胆な施策など打てるはずはない。事業に精通したトップダウンの決断がなければ不可能だ。東芝メモリやシャープの問題は、愚生から見れば「船頭多くして船山に登る」としかコメントできない。いずれにせよ、キヤノンに続きニコンも中国の工場から撤退する。中国共産党幹部は権力闘争に忙しく経済音痴だ。自国にある外国資本の工場は、非効率になればあっという間になくなることなど熟知していない。ところで、過去に大型汎用コンピュータの市場を席巻したIBM。そして、パソコン市場を独占したマイクロソフト。このような会社は、過去に作成された数多くのアプリケーションソフトがあるため容易に市場から退場をしない。コンピュータは生き物だから、過去のレガシィーを受け継いでいかなければ運用できない。そういう訳だろうか、1995年に愚生が企画・開発したシリーズが、今でも規模を小さくはしたがF社で販売されている。誇らしい気もあるが、功罪は専門家には透けて見える。インターネットプロトコルを使用したオープンネットワークと言いながら、一度踏み込むと顧客が逃げられなくなるクローズな世界を織り込んだからだ。愚生のエンジニアとしての邪な思考とビジネスマンの冷徹さが垣間見られる。
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