物の価格は需給で決まる
愚生の知らない世界だが、マンションコレクターという富裕層がいる。富裕層なのだから、何かで十分儲けている。だからマンションの売買で利益を得ようという目的ではない。趣味で高級スポーツカーなどを持つ感覚なのだろうか。東京都心といっても、人気のある場所は限られている。いわゆるの港区「3A」と呼ばれる麻布、青山、赤坂だ。愚生のような田舎者には、高い金を使って赤坂見附に近い「紀尾井町」などに住みたいとは思わない。表参道駅近くの「青山」も同じだ。貧乏人にとっては、日常生活品が高くて住みにくいだけだ。しかし、富裕層ともなれば利便性が最優先だろうから、物価のことなど細かい話だ。虚栄心を満たす目的のコレクターはラグジュアリーブランドの時計を収集するかのようにマンションを買うという。最近コレクターが狙うのは、タワー物件に限らず1戸当たり1億~10億円超のマンションが主流だという。オーナー社長などは、10億円超の物件を買って収集する。愚生などは、愛人でも住まわせるのかと穿った目で見てしまう。なんといっても、金の力は女性を引き付ける。トランプ大統領に限らず、ハリウッドスターが若くて美しい奥さんと結婚するケースが多い。ところで、このコレクター層が不動産業界で目立つようになったのは日経平均株価が2万円を越えてからだ。彼らは、短期間で転売するわけではなく「億ション」を収集するのが目的なのだ。愚生が察するに、株の含み益が何百億も増えた富裕層にとっては、10億円といっても愚生たちの百万円くらいの感覚なのだろう。愚生とは縁がない世界だ。しかし、一般的なマンション動向となれば、過去に歩いた道だ。3Aに代表される都心立地物件と対照的なのが、郊外にあって駅からバスを使ってさらに徒歩でたどりつく「バス便」物件だ。通勤経験のない人にはわからないだろう。サラリーマンをしていると通勤時間が気になる。雨の日も考えれば直線距離よりも、時間が計算できる駅近物件の徒歩圏が確かだ。そして、終電は午前様であればなお良い。バス便となれば、バスの終バスが帰宅の最終時刻になってしまう。それ以降は、タクシーで帰らなければならない。深夜にタクシーを捕まえるのは容易ではない。愚生のような情報産業で働く者は、決まった時間に仕事が終わることなどないため、長時間残業ができないバス便物件だけは避けたい。愚生が最初に住んだ団地はバス便だった。そのおかげで、通勤時はいつもイライラした。大手不動産の担当者は、従来なら2割程度だったバス便と駅近物件の価格差が2倍まで開いたという。不動産経済研究所によると、首都圏新築マンションの最寄り駅からの平均徒歩時間は9月発売分が6.7分だった。しかし、最近は徐々に短縮傾向にあるという。駅からから7~8分の立地のマンションでは、一戸建てとの競合も激しいからだろう。ところで、マンション価格は不動産会社が取得した土地の値段に建築費と利益を上乗せして決まる。上昇した地価と高止まりした建築費を積算すれば、駅近物件のマンション価格は高騰する。それに伴いバス便物件の価格も跳ね上がったが客がついてこなかった。つまり、実需がないために、バス便物件の価格は下り、駅近物件とバス便物件の価格差が広がった。少子高齢化で需給のバランスが崩れた不動産市場は、立地と価格の二極化はこれからさらに加速しそうだ。いずれにしても、少子高齢化で実需は減ることだけは確かだ。株に限らず、物の価格は需給で決まることを、痛感させられる。他山の石として、肝に銘じたい。
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