構造改革というと何か耳ざわりがよいが
富士フイルムホールディングスは、2018年3月期連結決算を発表した。営業利益が1306億円で前の期に比べ24%減。主力の事務機を手掛ける富士ゼロックスの構造改革に伴い割増退職金などがかさんだためだという。構造改革というと何か耳ざわりがよい。しかし、従業員の首切りというのが実体だ。経営再建や事業の再構築のために、期間と人数を限定して退職者を募集し、早期退職を促すのが退職優遇制度だ。一般に「希望退職制度」と言うが、実際は、不要な人材を指名解雇する行為を繕うことが多い。ところで、今回の割増退職金はどのくらい出たのだろうか。下種の勘繰りで知りたくなる。富士フィルムの大幅減益となったのは、稼ぎ頭で事務機を手掛けるドキュメント事業の不振が原因だ。このドキュメント事業の収益は、ほぼ富士ゼロックスの業績に相当する。2017年3月期ベースでは、同事業が連結営業利益の4割超を稼ぎ出していた。富士フィルムは、富士ゼロックスを買収後、給料や福利厚生を下げ、退職金制度を見直して利益を捻出してきた。もう奴隷と化した富士ゼロックスの雑巾を絞っても水は出てこない。ドキュメント事業の収益の悪化は、なにも昨日や今日に始まったわけではない。今までも悪化していたものを、従業員の賃金と呼ばれる固定費削減で決算数値を曖昧にしてきた。しかし、それがついに出来ない所まで来た。決算発表では、米ゼロックスの買収をしなければ、富士ゼロックスの経営の立て直しができないという。その理由は、米ゼロックスが富士ゼロックスから複写機やプリンタの小型機を買わなくなったのだろうか。それとも、富士ゼロックスは買いたたかれて赤字で出荷していたのだろうか。2018年3月期のドキュメント事業の営業利益は140億円と、前の期に比べ8割強の大幅減益だ。割増退職金など一時費用(700億円)が利益を圧迫したというが、それを割り引けば損益はそれほど変わらない。加算金が平均1000万円なら、7000人の退職費用だ。2000万円なら3500人分だ。余剰人員削減で固定費は500億円~700億円程度減るから、来季からは営業利益を押し上げる原資となる。これから、富士ゼロックスは2020年3月期までに、さらに国内外で1万人の従業員を減らすというから、今後も首切りは続くようだ。タコが自分の足を食うような市場では、今後の展望は見込めない。ドキュメント事業はV字回復を予定しているというが、人を切ったのだから当たり前だ。2018年の複合機市場は前年比で3%減少という。これからは、キヤノン、リコー、コニカミノルタなどと縮小するパイの取り合いが激化する。指名解雇の乱発で、社内が混乱している間に、同業他社が富士ゼロックスの顧客を奪っているというから深刻だ。ところで、ゼロックス大株主のカール・アイカーンは富士フィルムとの統合に反対する理由の一つは、富士ゼロックスの価値を過大評価していると指摘する。しかし、ゼロックス株は軟調で下落傾向にある。そして、今後も続くだろう。彼らはどうするつもりなのだろうか。アイカーンとダーウィン・ディーソンの持ち分は、2人で15%程度というから、少数株主が指名した取締役が実質的にゼロックスを支配する。対立の長期化はお互いに避けたいのが本音だろう。富士フィルムは、ゼロックスの臨時株主総会を開いて株主の総意を問うシナリオを描いているようだ。当面、愚生なら富士フィルム株など購入したくはない。
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