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2018年7月 6日 (金)

LTVなど考慮しないで賃貸アパート建設

Lif1803300035p1 昨日のブログで、投資信託を詐欺まがいで販売する金融機関が多すぎると書いた。しかし、賃貸アパート建設も同様だ。2016年末に、金融庁から金融機関に対して、賃貸アパート建設への融資を控えるよう通達が出た。その結果、愚生は賃貸アパート建設が減ったと思っていた。しかし、北陸の中核都市T市では、大東建託が120棟にも上る新築アパートの入居者募集を行っていた。積水ハウスは12棟。その他にも、多くのハウスメーカーが募集しているだろう。新築アパートの入居者募集という事は、いま建設中という事だ。なぜこのような愚が、行なわれるのだろうか。それは、賃貸アパート所有者から、建設後に一括で借り上げて転貸する「サブリース」という制度があるからだ。ただ、このビジネスをめぐりトラブルが相次いでいる。「長期間の家賃保証」をうたう業者の勧誘を受け、アパートを建築したものの、途中で家賃減額や契約打ち切りを迫られる。その結果、ローン返済に行き詰まるオーナーも少なくない。賃貸物件は明らかに供給過剰になっているから、経営に乗り出すには自分で入居見通しを見極めなければならない。どこのハウスメーカーも、「30年借り上げる」「安定した家賃収入が受け取れる」、そして融資する金融機関も携えて勧誘する。実際に、某氏は不動産会社から勧誘され、3階建てアパートを建築した。最初は、アパートを建設したハウスメーカー子会社の不動産部門が一括で借り上げた。しかしその後、1部屋3万5000円だった家賃を「5000円にしたい」と打診してきた。そして、受け入れなければ解約すると迫られた。当然、LTV(Loan to Value)など考慮しないで建設したため、提示された金額では、ローンの返済額が家賃収入を上回る。プロが運用するリートでは、こんなに金利が安くともLTVは50%以下だ。つまり、不動産評価額の半分以下に借金を抑えている。某氏は会社側に「30年のローン返済が終わるまで解約しない」との念書を見せて訴えたが、聞き入れてもらえなかった。騙されるのは、遊休農地などを持つ地主が、相続税対策になると言われ、アパート建築をするケースだ。そもそも、アパート経営は、入居状況の悪化や、近隣の家賃相場の下落が大きく影響する。それなのに、「30年間家賃収入は変わらない」と根拠に乏しい業者の事業計画書を信用するほうも愚かだ。こうした甘い予測で、賃貸物件を建築すれば、必ず悲劇は起きる。特に、収入が少ない年金生活者などは、もともとのキャシュフローが潤沢でない。そのため、ローン返済が業者から支払われる賃料頼みとなることが多い。その結果、家賃が下がると返済が行き詰まり、借金を抱えたまま土地や建物を手放す。そして、金が回らなければ、最悪は自己破産というケースもある。一方、アパート建設業者にとっては契約を解除したとしてもダメージにはならない。アパート建設時点で、建築関連費などで多額な利益が入るからだ。そのため、建て終わった後は、「後は野となれ山となれ」という無責任さだ。ハウスメーカーの勧誘者は安全・安心を強調する。しかし、賃貸市場は今、供給過剰の状態にある。東京、神奈川、埼玉、千葉の1都3県のアパート(木造・軽量鉄骨)の空室率は30%を超える。土地バブル崩壊以降、長期的な賃料下落が起きている。その上、通勤通学に便利な立地に人口が移動するため、郊外では今後、さらに大量の空き家が発生する。こうした中、アパート経営は厳しい競争にさらされている。賃料が大幅に下がったとしてもローン返済を続けていけるかは、事前に十分なシュミレーションが必要だ。日本全国に賃貸アパート建設が行われている現状を見れば、数年後には賃貸アパートのバブル崩壊が押し寄せてくる。貸し手も借り手も、大変なことになるだろう。これまでの、ワンルームマンション投資と違い、金利が安かった分だけ借入金額が膨大だからだ。

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