将来的な技術動向まで見通した投資
パイオニアというブランドを聞くと懐かしい。昭和四十年代、愚生が学生だったころは輝いていた。工学部の学生だった愚生も、一丁前にオーディオ・コンポを揃えていた。アンプとスピーカーはパイオニア、チュナーはトリオ、ターンテーブルはビクター、カートリッジはテクニカだった。内容も分からずに、名前だけで適当に秋葉原の石丸電気で買った。その名門パイオニアが資金難に見舞われているという。時代も変わったものだとつくづく思う。テレビや家庭用オーディオ部門から撤退し、カーナビに経営資源を絞ったが、そこでもつまずいた。銀行から見放されたパイオニアは、外資系投資ファンドから運転資金を調達するという。三菱UFJ銀行が参加する130億円の協調融資の満期は9月末。しかし、銀行側にパイオニアの借り換えに応じる姿勢はない。手元資金が300億円程度のパイオニアにとって借り換えができなければ運転資金に穴が開く。銀行が冷酷だったというより、何度も経営の失敗を繰り返したことが原因だ。パイオニアの失速は、プラズマテレビに始まる。富士通が日立にプラズマ部門を売り抜け、NECもパイオニアに二束三文で事業部門を売り払った。最後は、パナソニックとパイオニオアだけが、プラズマテレビを生産していた。ところが、量産にすぐれ製造コストも安い液晶パネルが、プラズマが得意としていた大型化にも成功した。その結果、パイオニアはプラズマテレビからの撤退を決定し、三菱グループからの支援を引き出した。しかし、カーナビ事業もスマホの無料ナビが普及してふるわず、最終赤字となった。ある投資銀行の幹部は、「パイオニアの技術は一流。でも、そこにあぐらをかいていた感が拭えない」と酷評する。愚生が思うに、パイオニアの経営者は、デジタル化という本質的な技術の見通しができなかったことだ。半導体で何度も失敗した富士通は、早々に日立に押し付けてこの設備投資が大変な世界から逃げ出した。液晶で成功したはずのシャープも、大型設備投資で失敗して台湾企業の傘下になった。パイオニアには、これまで安定的な収益源であるカーオーディオ、カーナビ事業があった。しかし、2010年ごろから米グーグルが地図に進出し、町中にグーグルストリートの撮影車両が走り回るようになった。地図は無料でユーザーに提供し、それ以外のところでもうけるプラットフォーマーが登場した。クラウドにデータを載せたグーグルの地図はめまぐるしく更新される。パイオニアなどが製造する既存のカーナビは、新設された橋を更新できず海の上を走ることもある。カーナビ事業のネット化まで見越した、真のデジタル化が見通せなかった。現在のパイオニアの時価総額は400億円弱だ。その価値の源は、子会社の地図情報だと言われる。自動運転向けの高精度地図を整備するには膨大なコストがかかる。自動運転が実現性を増してきつつあるため、まだパイオニアの企業価値は認められる。いずれにしても、外資系投資ファンドは、親会社のパイオニアには価値は認めないだろう。ファンド傘下でリストラを進めて収益を改善し、自動運転分野で大手メーカーと提携するか、子会社を分離してパイオニアを解体して売却する選択肢しか残されていない。パイオニアのショールーム「パイオニアプラザ銀座」も、一等地のビルから消えた。「夏草や 兵どもが 夢の跡」という運命だ。ところで、脚光を浴びる中国のインターネット通販セール「独身の日」が12日午前0時で終了した。アリババの取扱高は、過去最高の3兆5000億円となり、前年比26%増えた。昨年の楽天のネット通販の取扱高約3兆4千億円を超える規模の取引を1日で達成した。一方、12日の米株式市場でダウ工業株30種平均が大幅に続落。iPhoneに販売減速の懸念が浮上したアップル株は5%も下落した。アップルは7月末以来の安値をつけた。また、資金流用疑惑に絡んでゴールドマン・サックスも急落。米株価は中間選挙翌日の7日に急伸したが、先週末以降の下げで上昇分が帳消しになった。ダウ平均の終値は前週末比602ドル12セント(2.3%)安の2万5387ドル18セント。下げ幅は10月下旬以来、約3週間ぶりの大きさとなった。この下げは「iPhone」に顔認証用のセンサーを供給しているルメンタム・ホールディングスにアップルが減産を要請したことが引き金となった。アップルの大幅安が半導体や部品メーカーなどに広く波及したほか、アマゾン・ドット・コムやグーグルなど主力ハイテク株にも売りが膨らんだ。ハイテク株が中心のナスダック指数は3%近い下落率となった。株のボラティリティは高い。しかし、企業業績が日々動くはずなどない。需給の変動で、株の騰落がおきる。重要なことは、将来的な技術動向まで見通した投資だろう。パイオニアと同じ轍は、踏みたくないものだ。
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