よほど必要がなければ借りた方がよい。
不動産などには、まったく興味がなかった、かみさんがマンション広告を眺めていた。そして、持つと気になるものだと呟いていた。思い出せば、愚生が若い頃は、今は廃刊になった週刊住宅情報という雑誌をよく見ていた。当時の資産といえば、住んでいた団地やマンションくらいしかなかった。その自宅さえも、住宅ローンを差し引けばいくらも価値はなかった。田舎から出てきた者には、愚生に限らず都会での生活は大変だ。救いは、自分で築いたという自負だ。だから、都市化で土地成金になった都会人を羨ましいとは思わなかった。若かったこともあって、将来に希望を託していた。人の達成感は、積分値ではなく微分値だと思う。平たく言えば、満腹の時に何を食べても美味いと思わないが、腹をすかしていればご飯とみそ汁だけでも十分満喫できる。そういう価値観で生きてきたのかもしれない。愚生ごときの才では、身の丈に合ったことで満足すべきだと自分に言い聞かせてきた。最近は、不動産などまったく興味はなかったが、妻に触発されてマンション広告を覗いてみた。新築マンションを購入する際、誰もが抱えやすい不安がある。それは、「自分が選ぼうとしている物件には、資産性があるのか? 将来的に損をしないのか?」という一文があった。確かに、土地バブルを経験した愚生には、不動産の価値など需給で決まるいい加減なものだと思う。少子高齢化で先々細る需要の中で、果たして価値あるマンションなどあるのだろうか。そして、金利の安い今だから、物件がすべて暴騰している。今は、1990年前後の土地バブル期と同じかもしれないと穿った見方をしたくなる。そう考えれば、不動産ポータルサイトやモデルルームで良さそうな物件を見つけても、あと一歩踏み込めないという記事は納得がいく。マンションの売主が「私たちは良質の情報を持っており、取り扱う物件はすべて資産性が高い」との建前を真に受けるのも抵抗がある。資産性の高い物件は、どうすれば見つけられるのか。不動産には、換金性が悪いというリスクがある。買い手がいなければ、値段をつけようがない。田舎の土地など、いくら公示価格がどうだと言ってみたところで、実需がなければ道端の石ころと同じだ。購入したマンションに、未来永劫住むことはなく、売却しなくてはならなくなったときに、はたしていくらで売れるかは重要なことだ。当然ながら、住宅ローンの残債が存在すれば、この残債よりも売却額が少ないと、その差引残高がそのまま自分の負債となる。すなわち、マイナス資産と呼ぶのが相応しい。そして、マンションを貸し出したとしても、貸出額が毎月の住宅ローン支払いを下回れば、自分の持ち出しとなる。愚生の友人の中にも住み替えた後、前の住宅を売却しなかったため、ここ数十年の不動産の値下がりで大きな資産喪失を被った者もいる。つまり、手放す事を想定すれば、マンションの不動産価格の下落は、本人にとって将来的な死活問題と直結する。ただし、金持ちなら「このマンションに住みたい。自分たちが気に入ったところに住むのが一番」という話も通じるが・・・。では、マンションの価格を決定づけるロジックとは何か。言い換えれば、購入するマンションが適正価格で販売されているのかどうかを評価することだろう。しかし、不動産価格はいったいどのように決められているのか……?不動産業界内では、新築マンション、中古マンション、賃貸マンションそれぞれ、次のような考え方に基づいて値付けされている。中古マンションの場合は、基本的にはマンションの実際に売れる価格(成約価格)だ。周辺相場とマンションの状態(立地、築年数、向き、階数、眺望、広さ、修繕)によって適正価格帯が絞られる。言い換えると、需給でおおむね価格を決定される。新築時から好立地で人気があるマンションであれば、住みたい人が多い。つまり将来売却時にも住みたい人が多いことが予想されるため、買い手が見つかりやすい。このようなマンションは高値で取引ができる可能性が高く、資産性が高い。賃貸も中古マンションと同様で実需が多い物件が資産価値は高い。そういう意味では、意外にも新築マンションの価格決定要因が市場特性だけでないことがわかる。中古、賃貸の場合は市場原理が強く働く。しかし、新築の場合はデベロッパーなどの企業の介在要因が大きい。逆を言えば、新築マンションは値付けミスが起こりやすいことから、資産性が高いマンションを購入できるチャンスが多いが、逆の場合もある。愚生の住むM駅の近場などでも、60~70平米のマンションが、5,000~6,000万円で売れ残っている。いくら利便性がよくても、高すぎるのだろう。賃貸物件なら、グロス10%で回らなければならない。そう考えれば、値付けは自由だが高すぎて資産価値はないと評価する。実需が多いのは、月に8万~10万円くらいだろう。住宅賃貸料に、40~50万円の家賃を払える人が何人いるだろうか。せいぜい1000万円~1500万円くらいでなければ、賃貸物件には向かない。ところで、土地の値段はまちまちだが、上物はどこに建てても同じだ。それを思うと、田舎の賃貸アパート建設など溝に金を捨てるようなものだ。それほどマンションの価値がないというのに、なぜ買ったのかと問われれば、それは必要があったからだ。要するに、今の低金利で少子高齢化の不動産は、バブルで膨れ上がり資産価値などない。よほど必要な理由がなければ、持つより借りた方がよい。
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