トーマス・クックが経営破綻
英老舗旅行代理店トーマス・クックが経営破綻した。愚生はトーマス・クックというと、思い出深い。それは、今から四十数年前になる学生時代を思いだすからだ。当時、海外旅行が盛んでなかった時代、トーマス・クックのタイムテーブルとユーレイルパスで欧州を旅行した。北はコペンハーゲンから南はジブラルタル海峡近くの都市まで行った。金もない一人旅で、アポイントメント無しの旅行のため、気楽ではあったが必死だった。その旅行では、トーマス・クックのタイムテーブルで列車時刻を調べて移動した。本当に役に立つ時刻表だった。トーマス・クックの創業は、1841年というから歴史がある。500余りの実店舗を構える同社は、変化する旅行習慣に対して驚くほど適応力がなかったという。時代遅れなビジネスモデルだったため、英政府は同社を救済する措置を拒否した。その代わり、同社を利用して海外旅行中の英国人約15万人を帰国させる費用は、政府が負担する。英国が合意なしでEUを離脱し、破綻する企業が出た場合にも、モラル・ハザードを伴うような企業の救済をおいそれと行うことはないようだ。同社は2011年以降、経営難にあえいでいた。民泊仲介サイトを運営する革新的企業や、格安航空会社が台頭し、そこにポンド安と2016~2018年夏の猛暑が重なってとどめを刺されたという。そのせいで、ジョンソン英首相は、海外旅行者の帰国費用は負担しても、200億円拠出してトーマス・クックの経営破綻を救済することはしなかった。この破産で、トーマス・クックの筆頭株主である中国の復星旅遊文化集団などの株主は、出資金が紙屑になった。債権者も軽い損失では済まないだろう。世の中が変わる中で、生き残るのは容易でない。1960年代「IBMと7人の小人」と称した「UNIVAC、バローズ、Scientific Data Systems (SDS)、CDC、GE、RCA、ハネウェル」の中で、現在もコンピューター部門が生き残っているのは、バローズとUNIVACが合併したユニシスくらいだ。愚生がF社に入社した1970年代は、「IBMと7人の小人」と呼ばれるメインフレーム市場の戦いで決着がついた頃だった。IBMの市場シェアが70%を超え、他社のシェアがあまりにも小さかった。その後、小人5社は、撤退・売却・倒産の憂き目にあった。日の丸コンピューター企業と呼ばれたF社などは、小人にも数えられずに蟻が巨象に挑むような戦いだった。F社では、IBM製品を次々に買いあさって評価していたため、コンピュータールームで容易に見ることができた。物まねというが、当時のF社にはIBM製品をまねる技術すらなかった。愚生のような大学出たての、右も左もわからない新人まで駆り出して設計していた。当時を知る愚生には、あのブルーの横縞の入ったIBMロゴに畏敬の念を持つ。あの美しかったIBMも、GAFAやMANTのような新興企業に押され古惚けてきた。
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