半導体から量子へ「量子コンピューター」
最近は、量子コンピューター開発の記事が多い。愚生のような古いエンジニアは、コンピューターといえば2進法だと思ってしまう。そもそもなぜ2進法がコンピューターで使われたかといえば、電気回路のコストの問題からだ。電気回路で、「1」と「0」という状態を判別する回路は簡単だ。電圧があるレベルの「状態以下」か「以上」を判別すればよい。トランジスターのスイッチング状態(飽和領域)で簡単に作りだせる。3進法では、中間の値が「A<B<C」であれば、「A以下」と「C以上」という3つの状態を作り出す回路が必要だ。「ある」「ない」の方が、電気回路は遥かにコストが安く、信頼性が高い。そういう考えがこびりついてしまっているため、実現性を考えられると量子コンピューターを理解することが難解だ。量子コンピューターには、あらゆる計算処理が可能な「量子ゲート方式」と、最適な組み合わせを見つけ出す計算に特化した「量子アニーリング方式」の2種類がある。量子ゲート方式にはグーグルのほかIBM、マイクロソフト、インテルといった米IT大手が開発に取り組んでいる。この方式は、広範囲の分野での応用が期待できる半面、高速化と安定性の両立が難しく本格活用には20~30年かかるとみられている。量子ゲート方式や量子アニーリング方式では、超電導を起こすために絶対零度に近い極低温環境を作り出す必要がある。量子アニーリング方式は、2011年に世界で初めてカナダのDウエーブ・システムズなどが実用化し、商用化でも先行している。ただ、量子アニーリング方式は組み合わせ最適化計算にしか使えないという制約がある。一方、アニーリング方式は、量子現象を現行のコンピューターで疑似的に再現するため、超電導を起こすための冷却装置などはなくても常温で稼働できる。そのため、開発には現実的な方式のようだ。既存コンピューターの仕組みを発展させたデジタルアニーラは、実際の量子運動を計算に応用しておらず、厳密には量子コンピューターではない。膨大な選択肢の中から最適解を見つけ出す「組み合わせ最適化問題」に特化したコンピューターだ。そういえば、世界の企業に本格的なコンピューター活用を促した米IBMの大型汎用機「システム360」発売から55年を経た。半導体から量子へとコンピューターの頭脳が切り替わる「量子コンピューター」は、もうずいぶん前から展示会などでは紹介されている。量子力学特有の0でもあり1でもある「量子重ね合わせ状態」を応用するコンピューターが実用化されれば、人工知能(AI)などの分野で飛躍的な発展は間違いない。しかし、それを目にするまで、愚生がこの世にいるかどうか自身はない。
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