政治家は思い付きで制度改革などするな。
経済統計をみると、企業は中高年への報酬を増やし、40歳前後の中堅社員の報酬はむしろ減っているという。一般的に55歳前後で役職定年を迎える人は多い。高齢者雇用といっても、60歳になれば、同じ仕事でも大幅な給与ダウンが普通だ。終身雇用を固守すれば、組織の人事を弾力的に行えないのだろう。同一労働、同一賃金を組合員は叫ぶが、この制度を遂行するには首切りが簡単にできることが前提だ。経団連会長は「働き手の就労期間の延長が見込まれるなかで、終身雇用を前提に企業運営、事業活動を考えることには限界がきている」と述べた。トヨタの豊田社長は日本自動車工業会の会長会見で「雇用を続ける企業などへのインセンティブがもう少し出てこないと、なかなか終身雇用を守っていくのは難しい局面に入ってきた」と述べた。経団連会長やトヨタ自動車社長が終身雇用制を守りながらの高齢者雇用の限界に言及している。経済団体のトップや経営者から終身雇用や年功賃金を否定する発言が相次ぐ理由はないのだろうか。高度経済成長を前提にした、日本的雇用慣行は限界にきているようだ。愚生のサラリーマン時代の初期は、年功序列型の「賃金後払い型」だった。20~30代に貢献度より低い賃金で働き、40~50代に貢献度より高い賃金を受け取る。そして、F社は日本企業で最も早く、成果主義を打ち出した。そのため、管理職に
昇進しない限り40歳代からの昇給はすくない。一年に、50円や100円程度だ。一方、成果主義だから賞与は大きく変動する。評価が正しいか、どうかはともかく激しかった。30代くらいでも半期で200万円くらい貰う人と、80万円くらいの差がでたことは事実だ。しかし、この制度は批判も多く改革が朝令暮改だった。愚生など役職が上がってからは、下々の制度そのものを理解していないこともあった。ただ、年功序列賃金は、若い人が多く中高年が少ない成長企業でなければ維持できない。今は1990年前後のバブル期に大量採用した50代前半が突出して多い。バブル期の人材が多い理由は、後輩追いこされ、転社しようにも行き場がなかったからだ。彼らに、貢献度より高い賃金を払い続けることはできないのは明らかだ。昨今は技術革新が加速しているため、若いころ身に付けた能力や知識が定年までもたず陳腐化してしまう。愚生は情報産業に勤務していたため、休日は家で専門誌を読み漁って新しい情報をインプットしていたことを思い出す。政府は働き方改革で、同一労働同一賃金を来年から企業に求めるらしい。しかし、公務員でない民間企業は適者生存だ。自由に正社員を解雇できる仕組みを伴わないと、非正規社員ばかりが増える。そして、平均の人件費コスト全体を押し下げることになる。そして、今からの制度改革では、賃金を抑えられていた30~40代が一番割を食らう。法制度なら法改正で一気に変わるが、企業が本腰を入れても実現までタイムラグが生じる。バブル世代を含む今の50代は、何とか制度改革の遅延で逃げ切れるだろう。慣行改革には、時間を要する。いずれにせよ、今の30~40代は「後払い型賃金」の下で働いてきた。今後、貢献度と賃金が結びついた給与システムが一般化すれば、本来40~50代で受け取るはずだった給与を30~40代はもらい損なう。大学受験の入試改革でも痛感したが、今の政治家は二世議員ばかりだから苦労などしていない。安倍晋三首相を筆頭に、石破、小泉進次郎、河野太郎、渡部好美、船田元・・。地盤、看板、かばんは、すべて親譲りだ。思い付きで、制度改革などせずに企業に任せればよいのではないか。いずれにしても、非正規雇用労働者が増えたのは小泉純一郎政権の派遣法の改革が発端だ。民間企業は、潰れれば雇用もなくなることを忘れてはならない。
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