「大欲は無欲に似たり」
アリババグループは先月11月26日に、香港証券取引所に上場を果たした。アリババは今では、アメリカ資本市場で時価総額上位10社に名を連ねる唯一の中国企業だ。公募価格は1株当たり176香港ドル(約2450円)だったが、初値は187香港ドル(約2600円)で公募価格を6%上回った。元々、創業者のジャック・マーは、ニューヨーク証券取引所で上場した際、「条件が許せば、我々は香港に戻ってくる」と語っていた。香港は世界三大金融センターの一つだ。そして、アリババが最初に選んだ上場先でもあった。しかし、同社は2014年に香港での上場を計画していたが、香港取引所の「種類株式制」を許可しないとのルールが足かせとなり、香港上場を諦めた。ただ、香港取引所でも上場制度改革の結果、制度的障害が取り払われたため今回の上場となった。証券取引所は、地域ごとに特定の投資家グループを抱えている。アリババはすでに米国で上場している。それにもかかわらず、香港で上場する理由は、複数地域での上場は株主基盤の拡大や株式の流動性の向上につながる。さらには当該地域における企業の知名度向上や商品のPR活動にもメリットがあるからだ。ただし、複数地域での上場では、企業がそれら地域の法律、会計、監督管理、情報開示などのルールを順守する必要が生じる。そのため、短期的には多くの精力を費やすことになる。しかし、長期的にみれば、企業のグローバル化経営やガバナンス水準の底上げにつながる。2014年には香港での上場が果たせなかったジャック・マーは、捲土重来の機会を狙っていた。香港取引所は、昨年4月に種類株式の上場を許可した。そのため、経営権を維持したいジャック・マーとの利害が合いアリババの上場が実現した。アリババのグローバル化戦略として、東南アジアや南アジア市場は、今後のさらなるグローバル化において欠かせない地域である。同社は世界の半数近くの人口が集中しているこの市場に早くから進出し、シンガポール起点のECプラットフォーム「Lazada」やインドで電子決済やECを手がける「PayTM」などを買収している。今回の香港上場は、アリババのグローバル化を推進する起爆剤としたいのだろう。アリババの営業活動によるキャッシュフローは、473億2600万元(約7300億円)、またフリーキャッシュフローは304億8800万元(約4700億円)、現金および現金同等物は合計2341億元(約3兆6300億円)に上る。この数値から言えることは、アリババはお金に困っているから公募上場したのではない。今後の成長を支える新事業として、アマゾンやマイクロソフトと同様に、クラウドコンピューティング事業の売上高の伸び率(64%)が大きい。東南アジア事業の受注件数などは、2倍に伸びている。香港にアリババ株(BABA)が上場した後の今後の見通しはどうなのだろう。SBG(ソフトバンク)決算の時は、アリババの株価は184USドル。昨日の終値は205.55USドルだから、香港に上場以来、株価は10%以上も上昇した。しかし、アリババの時価総額は50兆円強だ。これは、香港上場時の1兆円分のBABA株式のみを、総勢14億人も住む支那大陸の人々が分け合う形になる。試算によれば、アリババの適正価値=先月時点で258USドルという見方もある。孫正義は、アリババの規模が大きいのに、なんでアマゾン時価総額が大きいのかと疑問を呈す。そして、孫正義はアリババの方がアマゾンより価値があると呟く。そう考えれば、長期的には、まだまだアリババ株は上昇する可能性が高い。上場してからの12月のアリババ株のチャートを見れば、右肩上がりで如実にそれを示している。そういう愚生は、アマゾンを整理した金を、マイクロソフトの買い増しと、いくばくかのアリババ株購入に充てた。外国株の引き渡しベースでは、すでに2020年度が始まっている。大欲は望まないが、通期で15%~20%程度の利回りは欲しいものだ。「大欲は無欲に似たり」とはよく言ったものだ。
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