金利が安くても債権を購入
日経新聞に米政府の財政拡張の記事があった。米国の財政赤字額は年1兆ドル(約110兆円)を超え、先進国全体の8割を占めるという。債務残高はGDPの約100%と第2次世界大戦の直後以来の水準となり、利払いは年43兆円に膨らんだ。ところが、世界中の低金利下では、投資家が買う物がないので米国債を買う。そして、今後も米国債を買う動きは止まらない。米株高にもかかわらず米国債の10年物国債利回りは1.8%と低い。愚生のような、土地バブルや高度成長期を肌で感じてきた者には、この低金利に涎が出てしまう。日本では、住宅建設は高止まりで停滞してきたが、アパート建設の槌音は一向に止まない。低金利下で借金をして、将来のインフレーション頼みで大儲けしようとの考えがあるのだろうか。いずれにしても、レバレッジをかけた投資は予想が外れると破綻にい込まれる。少子高齢化で住宅の空室率が上昇する中、地方の人口減少地域でのアパート建設はご法度だと思う。建設を勧める住宅ベンダーなどは、詐欺師ではないかと穿った見方をしたくなる。不景気の日本やドイツ、フランスの国債は今や、0%程度やマイナス金利に沈んでいる。それに比べれば、米国債は1%以上の金利が付くから投資家は米国債を買う。米財務省によると外国人が持つ米国債の残高は2019年1~11月に4692億ドル増えた。日本が最も多いが、欧州やアジア、中東、南米、アフリカなどを含め全員参加で買っている。一方、2000年代の最大の買い手だった中国は、経常黒字が減ったこともあるが、分散投資を進めたため米国債の保有額が減った。米国債を買うことは、中国にとっては敵に塩を送る行為だ。トランプ大統領の就任後、財政赤字が膨張し、米国債の発行が増えた。IMFによると2019年の赤字は1兆2千億ドルで、就任前の2016年から5割増えた。その最大要因は、景気刺激のための大型減税だと言われる。米国の財政赤字は、リーマンショク直後の2009年(1兆9千億ドル)に次ぐ水準だ。一方、日本や欧州では過去10年で財政赤字は縮小し、国債発行も減った。日銀が日本国債の4割を保有するなど流通量も減っている。米国債の発行残高は2019年9月末で19兆ドル弱とGDPと同水準になった。米国がGDP並みになるのは第2次大戦の戦費で債務が膨らんだ時期以来だという。米議会予算局によれば利払い費は2020年に4600億ドルと4年でほぼ倍増する。2025年には7240億ドルと、国防費(7060億ドル)をも上回る。投資家にとっては金利の収入源になるが、米国にとっては債務が雪だるま式に増え、米財政は持続不可能な道を進んでいると指摘される。過去は、中国や産油国など経常黒字国の米国債投資に依存したが、現在は世界各国で投資案件がないことが、米国債への資金の出し手になっている。米国債も為替リスクはあるが、物に投資することと違い、いつでも円に換金できる。日本のような人口減少国で負動産と交換すれば、その利回りよりも換金性が疑われる。デフレ下では、古くなった建物は新しい物より必ず安くなる。不動産を希望価格で売却することは至難の技だ。値段のつかない田舎の土地を見れば容易に理解できるだろう。今後米国で、低金利の前提が崩れれば、米国債の売りが出て暴落する懸念も出てくる。また、為替リスクで損失を抱える可能性もある。そうは言っても、現状投資先は米国債や株しかない。金が集まる場所の米ドル安は、当分考えにくいとすれば、当分は変化が起きるとは思えない。思い返せば、金利が上がれば不動産は暴落する。1990年以降の金利政策の失敗で、どれだけたくさんの不動産会社が倒産しただろうか。そして、不良債権を抱えた銀行が破綻した。その後遺症の不景気で、住宅ローンが払えなく家を失くした人もいた。愚生の脳裏にも、高金利下で一生懸命に質素倹約に励んだ記憶がある。そう考えると、金利が安くても債権を購入する気持ちが分かる。
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