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2020年2月 3日 (月)

都心で増殖する極狭アパート

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愚生の時代は、ウサギ小屋からの脱出という言葉がはやった。日本人の住宅事情を欧米人が揶揄したものだった。ところが、最近は東京都心の「極狭アパート」が若者に人気だという。彼らが住まいに求めるものが変わってきたようだ。新宿から電車に乗って約5分。京王線笹塚駅を降りた世田谷区の閑静な住宅街に2階建て賃貸アパートがある。玄関ドアを開けると、すれ違うのも困難なほど狭い通路だ。壁際にソファ、机、衣装ラック、冷蔵庫が置かれた居室には、人ひとりが寝転ぶのがやっとの空間が残る。トイレとシャワー室はあるが、洗面台、浴槽、収納、洗濯機はない。部屋全体の面積は約13平方メートルで、一般的なワンルーム(約25平方メートル)のほぼ半分だ。愚生が社会人になった頃は、約13平方メートルは一般的だった。愚生が大学時代は、6畳一間に押し入れ付きだったから、風呂・トイレ共同で部室の広さは約12平方メートル弱だった。入社一年目に、寮の相部室が嫌で入居したアパートも同様だった。その頃は、それでも自分のプライバシーが保てるから嬉しかった。共通な事は、大学や会社から通勤・通学時間が短かった。当時は、世の中が裕福でなかったせいなのだろうか、全く不満はなかった。その後、政府がワンルームマンションの規制に取り掛かり、最低の広さを16平方メートルとした。そして、最近の一般的なワンルームマンションは、約25平方メートルくらいに広がった。駅からの利便性と部室の広さは相反する。家賃が同じなら、どちらかを犠牲にして折り合いをつけなければならない。郊外の一戸建てと都心の矮小なマンションも同じだろう。少子高齢化で、住宅の選択肢が増えたせいなのだろうか、最近は都心回帰が多くなった。某不動産会社は、極狭物件を新宿区や目黒区などの都心部で展開する。そのアパートの入居率は常に99%で、新築の入居受け付けは3日で満室になる。入居者の8割は20~30代の会社員や学生らだという。ただ、いずれも築浅で壁や床は白を基調にした物件で、家賃は通常のワンルームより数万円ほど安い。最近は、通勤・通学時間の無駄を省くことで、浮いた時間を自分の時間に充てるそうだ。彼らの多くがこだわるのは、最寄り駅からの近さなどの交通アクセスだ。結局、必要な要件を絞り込むうち、通勤や通学にかける時間も減らせる極狭アパートに行き着く。都心で増殖する極狭アパートは、物質的な豊かさとは異なるものに価値を見いだす人々が増えている表れだろうか。その証拠に、全国宅地建物取引業協会連合会(全宅連)が、2018年に18歳以上の男女2800人を対象に実施した部室探しの意識調査がある。一人暮らしをする際の部屋探しで重視する点は「駅が近い」が55.5%と半数を超え、2017年より13.6ポイント増えた。一方、建物で重視するポイントは「間取りの広さ」が63.7%で最多だったが、3年前と比べて5.1ポイントも減少した。さらに、「駐車場の有無」は27.2%で20ポイント近く落ち込み、車離れが加速する。住宅も少子高齢化で、静けさや自然環境を求める環境から職場へのアクセスの利便性を求める傾向が出てきている。そして、築年数やセキュリティーの設備も物件探しのキーワードだという。そういえば、某不動産評論家は、都心で家を買うなら資産価値の下がらないマンション物件を勧めていた。そうでなければ、賃貸にすべきだとの主張だ。そして、資産価値の重要なポイントは、都心近くの駅から徒歩7分以内の物件だという。世相を反映して価値観は、紆余曲折する。しかし、行き過ぎたものは全て回帰する。人口減少が加速し空室率が上がった現代は、職住接近が最も見直されているようだ。

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