藤井七段の終盤の恐るべき実力
昨日は、第61期王位戦七番勝負の第2局、藤井聡太七段vs木村一基王位戦をAbemaTVで観戦した。対局は相掛かりの戦型から、藤井七段がリードを奪われた。しかし、最終盤に鋭い攻めが決まり、逆転で勝利を収めた。終局後、藤井七段は「最後は開き直って踏み込んだ」と話す。愚生も午後7時ころまでは、藤井七段の負け将棋だと思って見ていた。上手い寄せがあれば、そのまま木村王位の勝ちになる局面だった。ただ、藤井七段が必死の防戦を続け、一手でもゆるめば、たちまち逆転という感じだった。AbemaTVでは、局面の優劣やコンピューターソフトの次の一手が出ているから、ある程度の知識があれば、それが示す状況を理解できる。棋聖戦第3局でも、渡辺明棋聖が優位に立ちながら、藤井七段が手段を尽くして、最後はギリギリの勝負になっている。天才肌の藤井七段玉は、簡単には寄せられないようだ。ソフトが示す評価値だけを見れば、ずっと木村王位が勝勢と言える点数だった。しかし、わずか一手の誤りで評価値は逆転してしまうゲームが将棋だ。藤井七段は、一手の誤りでひっくり返せる局面を苦しいながらキープしてきた。そして、終盤になりコンピューターソフトの評価値が藤井七段に傾いてきた。どうも終盤の正確な速度計測で、126手目の木村陣の金を取ったことが形勢の大逆転につながった。愚生のような素人が言うのはおこがましいが、将棋は終盤力が大きく、織田信長の桶狭間の戦いと同様だ。桶狭間の戦いは、1560年6月12日に尾張国知多郡桶狭間で行われた。2万5千人といわれる大軍を率いて尾張に侵攻した今川義元に対し、尾張の織田信長が3千人の軍勢で本陣を奇襲し、今川義元を討ち取って勝利した。将棋はいくら優勢であっても、手駒が多くても勝ちではない。相手の王様を取れば勝ちのゲームだからだ。愚生は局後に、木村王位が深いため息をつき、部屋の中空を見上げていた。眼がうつろで泳いでいたように見えた。無念さと自分自身に対する歯がゆさが、そうさせたのだろうか。見ていて気の毒だったが、勝負の世界は厳しい。いずれにしても、この大逆転劇を呼び寄せた藤井七段の1分将棋での終盤の恐るべき実力だ。愚生は、リアルタイムで藤井伝説を目にして感激した。次局以降はどんな展開が待っているのかは知れないが、明日の魔太郎との棋聖戦で早期に決着をつけて頂きたい。
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