掛声だけのデジタル庁では?
最近、盛んにデジタル行政の一本化の目玉としてデジタル庁の創設が叫ばれている。菅首相は、マイナンバーカードなどデジタル政策に関して、強力に進める体制を構築するという。今、行政や民間の間でデジタル化の必要性は分かるが、過去の失敗は何だったのだろうか。
思いだせば、過去に住基ネットというものがあった。住基ネットは、正式名称を「住民基本台帳ネットワークシステム」と言う。市区町村の住民基本台帳に記録されている者に11桁の住民票コードを割り当てた。それにより、氏名、生年月日、性別、住所などが記載された住民基本台帳をネットワーク化し、全国共通で本人確認ができるようになった。しかし、これはマイナンバーと大きく違う点は、行政機関間での情報連携を目指したものではなく、あくまでも自治体の事務における個人情報の効率化を目指していた。ただし、マイナンバー制度の個人番号は、住民票コードを変換して生成される。つまり、住民票コードは住基ネットのシステムによって付番されているから、住基ネットがなければ、個人番号は付番されない。そう考えれば、個人番号を付けるという点から住基ネットは、マイナンバー制度にとって必要不可欠なものなのだろう。愚生の老婆心なのだが、住基ネットでも同姓同名や数十万もある戸籍漢字コードの割り当てが問題になった。結局、各市町村で作成された名前をコードで統一することは不可能なため、漢字をイメージで出力して転送する方式が取られた。これは、住民票を他市町村で出力する場合は、データベースは各自治体が管理していながらデータ送出することだ。要するに、自治体のデータベースは各々別々な形式で管理されている。運転免許証でも警察庁が一括管理している。年金台帳は旧社保庁、そして国民健康保険は各自治体の市町村だろう。データベースをマイナンバーカードに紐づけする作業や検証することは大変そうだ。金融機関の銀行口座や証券口座、確定申告の番号は既に紐づけはされている。新規の紐づけは、運転免許証の更新を考えれば、最低5年以上は必要だろう。各省庁にある国民のデータベース一元管理の紐づけには、数多くの手続きがあるだろう。掛け声だけで、5%しか普及しなかった住基カードのようにならなければよいが。官公庁は、未だに決済にハンコを使用しているという。そして、FAXでやり取りしているというから先が思いやられる。データベース統合の前に、民間企業のように人事や給料、稟議のコンピューターシステムによる決済処理などの方が先ではないか。
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