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2020年9月21日 (月)

藤井二冠第2局封じ手550万円は良い買い物

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日本将棋連盟がオークションサイト「ヤフオク!」に出品していた王位戦七番勝負第2局~第4局の封じ手の入札が、20日夜、締め切りとなった。藤井聡太二冠が王位を奪取した第4局の封じ手が1500万円、第2局が約550万円、第3局は約200万円となった。テレビのニュースで、第2局を550万円で落札した人をインタビューしていた。落札者は、藤井二冠が初めて書いた封じ手のため、2局目の方がより価値があると思っている。それが550万円なら、高いとは思わないとのコメントだった。愚生も2局目の封じ手は、一番価値があると思うため比較すれば割安だと思う。ただ、高いか安いかの値段の妥当性については、愚生にはわからない。ところで、藤井二冠は棋譜の分析のためのパソコンを自作することで知られている。中日新聞に掲載されたインタビューでは、「最新のPCは、CPUにRyzen Threadripper 3990Xを使っています」と明かした。これは、大学などの研究機関や、動画編集を業務とする企業が使うCPUだ。一般の家電量販店で取り扱っておらず、専門店でないと手に入らない。この「3990X」は、AMD の第3世代の最もパワフルなデスクトップ・プロセッサーで「64コア/128スレッド」を搭載する。これは、先に登場した 32コア/64スレッドのRyzen Threadripper 3970Xと24コア/48スレッドのRyzen Threadripper 3960Xの上位モデルにあたる。昨年終盤に登場したRyzen Threadripper 3970Xの2倍のコア数(8コアのCCDを8基搭載)を備えたCPUだ。ただ、最大128スレッドが生み出すパワーは、PCの処理性能を高めてくれるという保証はない。シングルコアCPUやマルチコアCPU、クウォドコアCPUとコアを増やしていけば、単純に早くなりうだと思うがそうはいかない。並列処理のオーバーヘッドが大きくなり、効果が出ないこともある。特に、Ryzen Threadripper 3990Xは、自作PC市場向けのCPUとしては未曾有の64コア/128スレッドという強烈な並列度を持つ。最大128スレッドが生み出すパワーは、PCの処理性能をどこまで高めてくれるのだろうか。簡単には予想できない。一般的なWindows 10環境では、1プロセスあたり64スレッドまでしか使えない。そのため、Ryzen Threadripper 3990Xではフルスペックの性能は出ない。なぜなら、Windows 10では64スレッドしか使えない。この「プロセッサーグループ」の制限を外すには、Linux環境で使用するしかない。Linux環境では、「プロセッサーグループ」の壁がそもそも存在しないからだ。多くの将棋ソフトは、オープンソース化されており、Linuxで動かすことが可能だ。ただ、Windows10搭載のPCならドライバーで組み立てれば可能だ。しかし、LinuxベースのOSを使用するとなれば、ハード・ソフト共にコンピュータに精通したエンジニアレベルでなければ容易でない。実売50万円近い値段のRyzen Threadripper 3990Xの投資に対し、処理性能向上というリターンを得るには、相当なコンピュータの知識が必要だ。そして、それを活かしきるには、ソフトウェア技術がなければ使い切れない。愚生などの自作PCユーザーなら、4コアや8コアのHEDT CPUが出た時に、マルチスレッド化の壁を痛感させられただろう。Ryzen Threadripper 3990Xは、その壁をとてつもない高さで復活させている。凄いのは価格やスペックだけではなく、現代計算機工学の限界を感じさせることだ。藤井二冠のCPUは、通常の家庭用パソコンの20倍~30倍も高価だ。50万円のCPU使用なら周辺回路も含めて数百万円相当の家庭用のスーパーコンピュータだ。ただ、世界コンピュータ将棋選手権で優勝した将棋AI「水匠」の開発者、杉村達也氏はRyzen Threadripper 3990Xが将棋の分析に最適だと推奨する。それは、CPUの性能で読みの速さが変わる。家庭用パソコンのCPUが1秒間に約200万手読むのに対し、藤井二冠が使っているCPUでは30倍の6000万手読める。つまり、短時間でより多くの局面を検討できるので、効率よく研究できる。6月の棋聖戦第二局では、藤井二冠の妙手「3一銀」が、将棋ソフトが4億手読んだ段階では悪手なのに、6億手読むと最善手になることが話題となった。普通のCPUなら10分以上かかるが、藤井二冠のコンピュータなら10秒で可能だ。しかし、超ハイスペックのCPUを使いこなすことは容易ではない。そう考えると、藤井二冠の番外の棋力も常識外だ。秋葉原のPCショップの店員が「将棋ソフトのためにThreadripper 3990Xを購入した人は見たことがない」というのも納得できる。畑の耕作に例えれば、往年の将棋棋士は、鋤や鍬で狭い畑を上手に耕した。最近の若手棋士も耕運機を使い、ある程度の畑を耕す。一方、藤井2冠は大型トラクターで広大な耕作地を一気に耕してしまう。事前研究だけでも、将棋を指す前に勝負はついている気がする。そう考えれば、後世になって封じ手550万円は良い買い物だった気がする。

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