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2020年11月 6日 (金)

事業意欲を大きく削ぐのではないだろうか

 

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 最近のニュースで、中共幹部の前近代的な頭の中を覗き知ることができた。それは「オーストラリアからの輸入禁止」や「アントのIPO」が突然中止されたことだ。アント・グループにといえば、アリババグループ創業者の馬雲(ジャック・マー)が筆頭株主だ。アントにIPOを認めれば金融システムにおける過度の影響力を持ち、中国共産党に不利益だと思ったのだろうか。どうも、中国当局はジャック・マーのフィンテック企業の影響力を弱めたいのが本音だ。しかし、アントIPOへの習近平政権の干渉は、外国人投資家に中国資本市場の透明性に疑いを招く。そう考えると、香港や上海が一流の金融センターとして存続できるのだろうか。今回、IPOを突然やめさせたことで、いかなる金融開放であれ、習近平と共産党に利する条件でのみ可能だということだ。このような情報開示がなく、監督当局の恣意的な動きをみれば、投資案件としてはチャイナリスクを痛感させられる。ジャック・マーのアントのビジネスでよく知られているものは「アリペイ」だ。日本のPayPayのような電子決済システムだ。これが普及したため中国では、紙幣やクレジットカード決済が大きく減ったという。アントの一番の儲け頭は、与信プラットフォームだ。中国当局が今標的としているのは、アント最大の収入源である銀行などからの融資を中国全土の消費者に提供する与信プラットフォームだ。国有銀行が貸し倒れリスクの大半を引き受ける傍らで、アントが高めの手数料を課して儲けている。中国当局は、アントに事業規制を課すために、金融持ち株会社の資本要件を引き上げる法律を急いで作った。IPOの停止決定は、習近平政権にとって金融・政治の安定が重要であると考えているからだろう。中国政府の観点からすれば、アントにIPOを認めれば、究極的には党の権力支配を損ねかねないと思ったようだ。しかし、350億ドル(約3兆6700億円)という史上最大規模のIPOが上場直前で中止されれば、証券市場には大きなショックだ。中国銀行保険監督管理委員会は銀行など資金の貸し手に、アントのプラットフォームを使わないよう促す方針だというが、これでは民間の事業意欲を大きく削ぐのではないだろうか。

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