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2020年12月 6日 (日)

住宅街での同一住所表示

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愚生が自治会長をしていた頃、私道を市に移管する調整をしたことがある。住民側の意向は、市道に移管すればM市のお金で道路整備が可能だ。一方、M市側は受け取ると管理コストがかかるため、難癖をつけては移管のハードルを上げてきた。愚生の住む地域は、昭和四十年代に分譲された(弥生という名称の)団地だった。当時、田舎から上京した子育て世代が入居したのだろう。愚生は団地に入居した初代の人を称して、弥生原人と陰口を叩いている。愚生宅の両隣や道路向かいのお婆さんたちは昭和一桁生れだ。もうすでに、今年は86歳以上になる人たちだ。今年から45年前後を差し引けば、当時は30代半ばから40代半ばの年齢だろう。分譲時の住所表示は、土地ごとにつけられた番号「地番」だった。今も不動産登記で使われる「○市△町123番地」などと表記される形式だ。しかし、人口増や市街化に伴う土地の再編などで、地番では建物を特定しにくくなった。そのため愚生の住む団地でも、郵便配達などに支障がないように、町名を変更し住所を丁目と番、号(住居番号)で記す「街区方式」が使用される。地番よりは、ずいぶん識別が改善された。しかし、都市化で広い宅地を分割した建売住宅が増えたため、街区方式の住居番号表記でも同一住所の問題が発生してきた。街区方式の住居番号は、区画を囲む公道を10~15メートルごとに区切ってふられている。建物の玄関が面した場所で住居番号は決まるが、家同士の玄関が近い場合や、公道から引き込んだ私道沿いに建つ家々は同住所になることがある。そうなると、別の建物なのに住所は同じになる。武漢ウイルスの感染拡大の中で、出前やインターネット通販の需要が増えるなか、誤配の温床になっているという。東京都内の住宅街では、約20軒の住所が末尾まで全く同じということもあるらしい。一般的に、宅配を頼んでも、プライバシーを気にして表札を出さない家も多い。広範囲に宅配する配達員は、地域に詳しくないケースがある。マンションなど建物名を省くと、住所から部屋番号まで同一になる。それを避ける為に、住民から申請があれば住所の末尾に「枝番号」をつけて区別できる制度もあるらしい。ただ、東京都板橋区では、2018年の制度開始以降の申請は11件にとどまる。愚生のような地方からの移住者は、街区方式で周りの家と同じ住所になる可能性があること自体知らない。2013年に始めた杉並区でも、チラシを配るなど利用を促しても約800件の申請しかないという。外食業態の出前の市場規模は2020年9月までの1年間で5755億円に上り、前年同期に比べて38%も拡大した。愚生が会長だった時に住民に私道移管を促した。しかし、高度成長期や土地バブルを経験し、土地神話を信じる人たち中には私道を財産と見なすもいる。私権が関係する問題は、いくら説明しても前に進まないことが多い。損か得かでしか判断しない人が多い。そう考えると、分譲前なら可能だろうが、いったん決まった住所表示を他人の都合で変更することは少ないだろう。誤配問題の解消は容易ではない気がする。

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