パイオニアを知る者にとって寂しい気持ち
パイオニアは、地図情報を手がける子会社インクリメント・ピーを投資ファンドに300億円で売却する。インクリメント・ピーは、全国を自動車などで走行して集めた地図情報をデータ化し販売している。カーナビゲーション向けや、「グーグルマップ」向けにもデータを提供する。パイオニアはプラズマテレビへの投資失敗や車載機器市場の縮小で経営危機に陥った。愚生が大学生だった頃のパイオニアは、オーディオのトップメーカーで光り輝いていた。愚生の狭い6畳一間のアパートに、パイオニアのアンプとスピーカー、トリオのチューナー、ビクターのターンテーブル、そしてカートリッジはテクニカだった。当時大卒の初任給が4万円位だったから、今の金額に換算すれば100万円くらいのオーディオセットだった。そのパイオニアも度重なる開発投資の失敗で、家電がアナログからデジタルへの遷移の中で輝きを失った。そして、2019年にアジア系ファンドが買収し、株式を非公開化して経営再建を進めていた。パイオニアを買収したファンドは、今回パイオニアの虎の子の子会社を売却する。買収時点で「パイオニアの価値の大半を占める」ともいわれた子会社を手放そうとしているから、今後のパイオニアはどうなるのだろうか。2019年当時、パイオニアは銀行から見放された結果、アジア系ファンドによる救済しか選択肢がなかった。今回売却するインクリメント・ピーは、トヨタ自動車やホンダ、日産自動車といった大手自動車メーカーやソフトバンク、KDDI、NTTドコモなどの通信大手を主要取引先に持つ。これを売却するというから、残ったパイオニアはもぬけの殻となる。どうも、買収したファンドはパイオニアの再建に音を上げて、自分たちの採算だけ合わせようと会社を切り売りしているようだ。ファンドによるパイオニアの解体ショーが始まったと見るべきだろう。パイオニアが消える日は近いような気がする。活況だった頃のパイオニアを知る愚生にとっては、何か寂しい気持ちになる。そういえば、学生に人気のあった東芝も虎の子の医療機器子会社をキヤノンに売却した。
平家物語の冒頭に、
祇園精舎の鐘の声
諸行無常の響きあり
沙羅双樹の花の色
盛者必衰の理をあらわす
とある。
他山の石を見て、愚生が貰うF社からの企業年金に改めて感謝しなければと思う。
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