中国企業株は買おうと思わない
バイデン米政権がウォール街に対し、「香港で用心しろ」というメッセージを送っている。日本でもソフトバンクGの株価を見れば、大方の想像がつく。中国が香港の法制度と金融システムの締め付けを強化しているからだ。バイデン政権が出した香港でのビジネスリスクに関する注意文書では、すぐに投資縮小や撤退を命じるものではない。しかし、アリババやテンセント、中国版ウーバー「滴滴」などを見れば投資に慎重にならざるをえない。中国では自家用車で客を乗せて運ぶ「白タク」は「滴滴」というプラットフォーム企業が出現する以前からあった。許認可された料金体系はなく、運転手と客との交渉で決める。メーターもないので、トラブルに遭っても自己責任だった。こうした個人営業による白タクは、主に空港や郊外への送迎で稼いでいた。2012年には中国で「滴滴」がサービスを開始し、「ネット予約車」という新たなカテゴリーの中で、組織だって運営されるようになった。この大手配車サービスの「滴滴」は、中国をはじめ、15カ国、4000以上の都市で事業を展開している。そして、2021年6月末にニューヨーク証券取引所でIPO(新規株式公開)を果たした。初値が公開価格を約19%上回る16.65ドルで、初日の終値は14.14ドルというスタートを切った。終値ベースの時価総額は685億ドル(約7兆6300億円)だ。アメリカで上場した中国企業のなかで、アリババに次ぐ過去2番目の規模となった。中国企業が米国市場を敬遠するなか、「滴滴」の上場は久しぶりの超大型IPO案件だった。しかし、上場からわずか2日後の7月2日に、中国のサイバースペース管理局は中国全土において、「滴滴」の新規会員登録を停止した。そして、7月4日には同社のアプリケーションの削除、さらに9日には同社系列のアプリ25件全体の削除を命じた。決済サービス大手のアリペイとウィーチャットペイなども「滴滴」へのアクセスを停止した。米株式市場で「滴滴」の株価は急落した。「滴滴」は数年前に、ウーバー中国事業などネット配車会社を相次いで併合し、中国国内のネット配車市場シェアの90%を占める。アクティブユーザーは3億7700万人(グローバル市場では4億9300万人)を擁し、中国のユニコーン企業だ。資金を大きくつぎ込んできた大株主らは、「滴滴」を速やかに上場させ、株価を高くして、つぎ込んだ資金を現金化して撤退する作戦を展開した。中国政府の上場規制を見て、「滴滴」は米国上場に上場した。だが、米国上場に成功に浸る間もなく、すぐに中国政府からの容赦ない規制を食らったという話だ。「滴滴」の上場目論見書によると、ソフトバンクグループが株式を22.2%、ウーバーが12%持っている。外資企業が株主の1位と2位を占めるこうした資本構成を見た中国政府は、「滴滴」の米国上場は外国投資家が現金化して撤退する作戦だと受け止めたからだ。さらに、「滴滴」研究院が同社の配車アプリを利用した顧客のビックデータを駆使して、北京の中央省庁の人的移動を分析した。リポートは時間軸に基づいて、中央省庁の人的移動を詳細にわたって分析していた。「国家発展と改革委員会の朝の出勤ピークは6時から、6時~8時までに到着したタクシー利用者は同委員会の1日のタクシー利用者の39.8%を占める」「科技省を出る利用者は16~18時に集中している。定時退社を好む傾向がある」と細部にわたり個人情報が盛り込まれていた。個人情報の収集・使用問題がクローズアップされている今、リポートの内容は中国政府に大きな衝撃を与えた。また、「滴滴」研究院が米国カリフォルニア州シリコンバレーに位置するMountain Viewにある所在地問題も話題になった。その結果「滴滴」がビッグデータを通じて中国の中央省庁の移動規則を監視しており、その情報は米国側が所有しているとの見方をされた。こういう問題を考えると、中国企業はいつ政府に潰されるかわからない。このことから、愚生は絶対に中国企業株は買おうと思わない。
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