クレジットカード決済とどう違う
愚生なども良く利用しているPayPay(ペイペイ)は、これまで無料だった中小加盟店向け手数料を有料化する。2018年からPayPayは登場したが、今やQRコード決済のシェア最大手だ。これは決済市場全体にとっても一大転換点だった。有料化に伴い同社の収益性はどうなるのだろうか。インターネット上にプラットフォームビジネスを確立するには、最初は赤字覚悟で普及促進を図るのが常だった。グーグルやアマゾン、フェイスブックも辿ってきた道だ。PayPayの決算書の数字を見れば、その損失の多さが分かる。100億円還元キャンペーンや膨大なテレビCM出稿などすれば当然だろう。その結果、QRコード決済市場における同社のシェアは決済額ベースで68%、決済回数ベースで66%になった。少なくとも現状では、圧倒的な勝ち組だ。そして3年間が経過した今、手数料を有料化することで、拡大重視から収益確保にかじを切ろうとしている。決算公告から、これまでに投じた先行投資が見られる。3カ年の最終赤字の累計額は1931億円。同じ期間の営業収益(売上高に相当)の累計額397億円に対し5倍近い規模だ。この巨額赤字を埋め合わせるため3回にわたり、資本金・資本準備金を取り崩している。その総額は最終赤字の累計額と同じ1931億円だ。貸借対照表の剰余金がマイナスになっておらず、資本金・資本準備金の取り崩しによりリセットしている。赤字覚悟の拡大路線を続けてきたからだろう。普通なら、これだけの規模で資本金・資本準備金の取り崩しを繰り返すと債務超過になる。しかし、PayPayに出資するソフトバンクグループやヤフーが増資を引き受けて、事業資金を注入している。手数料を有料化すれば、中小の店舗の加盟店が取り扱いを続けるだろうか。他のQRコード決済やクレジットカードなどの決済手数料と比べれば低い料率とはいえ、中小の店舗にとって月1万円規模の出費は無視できない。また、PayPayは2021年10月以降、売上金の加盟店口座への振り込みが原則月1回となる。振り込みを早めてもらうには手数料も必要になる。愚生の街でも、町村内の中小加盟店でのみ決済額の10~30%をPayPayボーナスとして消費者に還元するキャンペーンがあった。自治体と連携した「あなたのまちを応援プロジェクト」だ。PayPayは地元の商店街の空洞化という自治体に寄り添う提案をしてきた。そして、自治体の絶大な信用力をバックに当地の中小店舗の加盟店拡大を図った。このように、PayPayは過去3カ年、赤字覚悟の拡大路線で成果を上げてきた。2021年8月時点で4100万人というユーザー数は、検討中の店舗は加盟しやすく、加盟済みの店舗は脱退しづらくなる。しかし、課金拡大や売上金の月1回の振り込みなどになれは、加盟店にとってクレジットカード決済とどう違うのだろうか。PayPayは手数料有料化とういうが、楽天グループの「楽天ペイ」、KDDIの「au PAY」、NTTドコモの「d払い」などの競合サービスが相次いで新規加盟店の決済手数料の無料を打ち出している。愚生の住む近隣の店舗では、ほとんどPayPay以外を取り扱っていない。適者生存というのであれば、PayPay以外で生き残れる電子マネーは、目的がはっきりとしたSUICAぐらいしかない気がする。
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