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2021年9月15日 (水)

習近平指導部が掲げる「共同富裕」

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フードデリバリーなどの食品宅配最大手の美団(中国)が、当局から独占禁止法違反で摘発されている。政府が掲げる格差是正のため、配達員の給料の値上げなどの行政指導を促すためだろう。人件費増は業績への重荷となるが、中国政府は企業経営のことなどを考慮しない。この企業のトップ王興・董事長兼最高経営責任者(CEO)は、政府批判と解釈されかねない詩を投稿したことが起因だといわれる。美団は2021年に入ってから何度も当局の指導をうけ、4月には独禁法違反の疑いで調査も受けた。王氏はその後の5月、自身の会員制ブログに一編の唐詩を載せ、ネットで話題となった。中身は秦の始皇帝を批判するものだったことから、同氏がいまの体制に不満を持っているのではとの臆測を呼んだ。このケースは、馬雲(ジャック・マー)の政府批判で規制に翻弄されアリババ集団と似ている。アリババ創業者の馬氏は中国の金融システムを批判するかのような発言をし、習氏の怒りをかったとされる。その後は傘下のアント・グループが上場延期に追い込まれるなどの逆風にあう。中国政府は、美団に取引先に圧力をかける行為はやめる。配達員の労働環境にも配慮するなど指導を出した。王氏は政府方針に全面的に従う姿勢を強調した。美団の創業は2010年だ。王氏が米国留学でネットサービスや経営手法を学んだ後に立ち上げた企業だ。創業当初に出資を受けたのが、馬雲(ジャック・マー)氏が率いるアリババ集団だ。だが経営方針で対立して2015年に提携を解消すると、王氏はアリババの経営方針を公然と批判してきた。そして、2015年にはアリババのライバルの騰訊控股(テンセント)からも出資を受け入れ支援を得た。2018年に香港取引所に上場した際には当時の為替レートで約4700億円を調達し、いまの利用者数は6億人を超える。だがここにきて、想定外の重苦に直面している。1つ目は約1100億円規模との観測もある独禁法違反への制裁金。2つ目は習近平指導部が掲げる「共同富裕」だ。貧富の格差を縮め共に豊かになるとの方針で、巨大ネット企業の袋叩きだ。日本の食品配達のウーバーイーツと同様に、デリバリー配達員などのなかには労災保険に入れず、最低賃金が保証されていない人も少なくない。王氏は配達員の待遇改善に取り組むと訴えるが、950万人の配達員の待遇改善は収益圧迫の大きな要因となる。どうも、第2のアリババのようになってきている。政府規制に伴う経営環境の悪化で、リストラや破産に追い込まれた企業も多い。政府に盾突くと、企業経営が一夜のうちに倒産の憂き目にあうような国で健全な事業が育つのだろうか。

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