メタバースのプラットフォーム事業
「GAFAM」と総称される米巨大IT(情報技術)企業は一般にプラットフォーマーと呼ばれる。この中の一社「フェイスブック」は2021年10月28日に社名を「メタ」に変更した。正確な新社名は「メタ・プラットフォームズ」だ。証券のティッカーシンボルは仮想空間「メタバース」にちなんだ「MVRS」で、メタバースのプラットフォームという意味だ。「フェイスブック」は、API(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)を外部に公開してきたが、ソーシャルゲームなど外部アプリケーションが実行する環境は、スマートフォンの台頭によってすぐに終わった。メタは2010年代前半、スマホのプラットフォーマーになろうと独自スマホの開発を進めたが断念した。また、2016年には「メッセンジャー」などのチャットアプリケーションを会話ボットのプラットフォームとして育てる構想を発表したが、会話ボットは「次のスマホアプリ」にはならなかった。結局、フェイスブックは広告主向けのプラットフォームとしてしか使われなかった。最近愚生は、フェイスブックの広告が多いのに嫌気がさしてほとんど使わなくなった。メタは年間841億ドル(2020年12月期)という莫大な広告売り上げている。しかし、アップルは2021年春にリリースしたiPhoneの基本ソフト(OS)「iOS 14.5」にアプリなどによるユーザー行動の追跡を監視したりブロックしたりする機能を追加した。そのため、メタのビジネスモデルにも陰りが見えてきた。メタのマーク・ザッカーバーグCEO自身も、決算説明会でアップルの機能追加によって、ウェブにおける電子商取引や顧客獲得の効果が減衰するとの見解を示した。その証拠に、ユーザーが2021年6月にiOS 14.5を適用し始めて以来、ターゲット広告の正確さが低下し始めた。そして、広告の効果測定も難しくなったと述べている。これは、他社にプラットフォームを握られる悲哀だろう。Windowsで分かるように、プラットフォームを握った企業の一人勝ちだ。IBMのMVSやPCで日本のパソコンを制したPC98をみれば容易に理解できる。PC98プラットフォームで勝った一太郎や花子もWindowsがハードに依存しないAPI仕様に変更されると、ジャストシステムは凋落した。張本人のNECまでリストラの嵐となった。ザッカーバーグは、アップルがプライバシー保護でメタのビジネスモデルを脅かすならば、メタはアップルが「アップストア」で築いた手数料ビジネスに挑戦すると宣言した。メタバースのプラットフォーム事業を進めるに当たっては、仮想現実ゴーグルの販売やアプリ販売手数料収入に頼るのではなく、広告収入によるビジネスモデルを維持するという。メタバースを理解するには、映画「アバター」を見れば容易だ。ただし、この世界で勝ち抜くとなると、よほど優れたプラットフォームでなければ独占は不可能だろう。フェイスブックやインスタグラムとは、全くシナジーがないようだから大きな賭になる。
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