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2022年6月 1日 (水)

アパート経営が苦しい?

Daikokuyumtfuji
最近、首都圏から外れた人口減少が進む地方へ行っても、多数アパートが見受けられる。愚生が大学時代を過ごしたアパートと違いトイレや内風呂が当たり前だ。そして、半世紀前はアパート群の近くには必ず銭湯があった。また、愚生が幼い頃は終戦から時を経てない頃だったため、内風呂がある家は少なく、戸建でも銭湯に行った。今の温泉とは違うが、大きな浴槽に浸るのは子供心に楽しかった。ところで、多く見かけられるアパート経営は儲かっているのだろうか。愚生の知り合いでも、アパート経営が上手く運用できていないという声を聞く。はっきり言って、土地も建設費もすべて自己資金のキャシュで払うなら盤石だ。稼働率が30%程度でも損益がマイナスになることはないだろう。やはり、借入金を使ってレバレッジ効果を高めるから上手くいかないようだ。土地活用や不動産投資で注意しなければいけないことは、「デッドクロス」という分岐点だ。デッドクロスは本来金融から来た用語だが、不動産でも使われる。不動産のデッドクロスとは、借入金の元本返済額が減価償却費を上回る状況のことを指す。不動産投資は、デッドクロスが生じるとキャッシュフロー(手残り)が会計上の税引き後利益よりも小さくなる。会計上の利益とキャッシュフローが異なるのは、減価償却費と借入金の元本返済額があるからだ。減価償却費とは、建物は築年数が経過すると資産価値が落ちるという考え方からくる。建物には法律で耐用年数というものが設けられている。2016年以降は、個人は定額と決められている。ずいぶん昔になるが、愚生が不動産投資した頃は、定率か定額を選択できた。サラリーマン収入がある時だから、定率を採用して節税効果を活かして、物件が高くなれば売却する。そして、当時は土地取得の金利まで経費控除が認められた。マンションなどの購入額、つまり借入金全体の金利が控除対象になった。2016年から定額しか選べないため、例えば、3階建てアパートなどの鉄骨造なら耐用年数は34年と定められており、34年間かけて建物の資産価値を1円にしていくという計算をする。新築で12000万円の3階建アパートを建設すれば、ざっくりいうと毎年360万円ずつ会計上の建物の資産価値を落としていくという計算になる。現金の場合、費用として使えば資産が減っていくが、建物の場合は実際の支出(キャッシュアウト)は伴わない。税金は利益に対して課税されるため、減価償却費は節税効果がある。つまり、減価償却費は支出を伴わないにもかかわらず、税金を安くしてくれる。しかし、不動産投資で借入金使えば、借入金の元本返済額も存在する。借入金の元本返済額は、支出を伴うが利子部分以外は費用にはならない。税金は売上から費用を引いた利益に対して課税される。元本返済では、お金を返しても節税はできない。借金をするかどうかは投資家の選択だから、返すお金は費用ではない。つまり、借入金の元本返済は支出を伴うにもかかわらず、税金を安くしてくれない。支出を伴わないのに節税できる減価償却費と、支出を伴うのに節税できない借入金の元本返済額は真逆の性質だ。不動産投資では、この2つのことを考慮して投資しなければならない。農家がアパート建設しても安心なのは、アパート経営以外に大きな経理上の赤字と合算するからだ。なんとでもさじ加減で増減できるのだろう。愚生の通っていた国立大学では、農家や自営業の子弟で入学金や授業料を払っているひとはいなかった。たぶん、高校生時代からそうなのだろう。賃貸経営では、減価償却費=借入金の元本返済額になれば、税引き後利益とキャッシュフローが同額になり課税免除となる。少なくともキャッシュフローは、会計上の利益以上には確保すべきだから借入金の元本返済額≦減価償却費としたい。デッドクロスとは、キャッシュフロー≦税引き後利益の状態だ。極端な話、利益は黒字なのにキャッシュフローはマイナスということもあり得る。キャッシュフローがマイナスということは、自分の貯金を切り崩して補填する必要がある。なぜなら、借入金返済の滞納が続けば、最終的に物件が競売にかけられるからだ。当然、アパート経営が赤字なら、デッドクロスのときはキャッシュフローのマイナスが会計上の赤字よりも更に大きくなる。デッドクロスは、耐用年数満了後も借入金が残っていれば発生する。減価償却費は建物の耐用年数の期間内にしか計上されず、耐用年数満了後は計上されないからだ。単純に考えれば、耐用年数満了後は税金が増えキャッシュフローが一気に悪化する。そういう理由から、銀行は耐用年数以上では金を貸してくれない。ではどうやって対応すべきかと言えば、金を借りないことだ。先程の例で借りたとしても、定額償却360万円≧元本返済額でなければ安定して運用できない。アパート経営が苦しいという人は、入居率云々よりまずこの辺りが大丈夫なのだろうか。ただ、償却期間34年間も貸すなら、途中に大きな修繕費が発生するだろう。そう考えて20年で借入金を返せば金利無しでも600万円位の返済だ。やはり、最低建設費の半分くらいは自己資金を投入する必要があるのだろう。

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