新しく編み出される節税スキーム
不動産関連の記事に、相続税対策の節税スキームが載っていた。どうも、新しく編み出される節税スキームと取り立てようとする国税当局のイタチごっこが始まっている。その中で、都心オフィスビルなどを共同で所有する「不動産小口化商品」が急伸している。富裕層は億単位の高額なタワマンを買って課税評価額と実勢価格の差で相続税の圧縮を図っていた。しかし、このやり方も度が過ぎると違法だとの最高裁で判決だ。税制改革で政府が2015年の基礎控除縮小したことにより、本来なら課税対象でない中流層にも及んだ。豊洲に建つ「セレサージュ豊洲」はコスモスイニシアが展開する不動産小口化商品のひとつだ。豊洲エリアは再開発で子育て世代が増えた。そのため、学習塾などのテナントで埋まっているという。セレサージュ豊洲は任意組合で所有されている。出資は2口で1000万円からだ。相続節税を目的とする高齢者が、子供2人に相続させるために4000万円で8口買った。都心のビルを小口化して所有する相続税の軽減方法だ。2013年度末に473億円だった任意組合型の累計募集額は2020年度末に3倍の1447億円にのぼった。相続課税が強化された2015年以降に商品供給が増えたという。家賃収入による分配金に加えて相続税の財産評価を下げたい高齢者が小口化不動産を買っている。相続税は配偶者と子ども2人が法定相続人の場合の基礎控除は、8000万円から4800万円になった。東京都では2015年、亡くなった人のうち相続税がかかる割合が16%と前年の10%から跳ね上がった。夫婦の一方が先に亡くなる「1次相続」で残された配偶者の相続分は1億6000万円まで非課税のため、世帯単位では課税対象の割合はもっと高い。資産を現金などから不動産に移しておくのは、相続節税の常とう手段だ。土地は実勢価格の約8割の路線価、建物は固定資産税評価額で計算するため、現金での相続に比べて節税になる。賃貸アパートなどに使っている「貸家建付地」、200平方メートルまでの「小規模宅地」とみなされれば、2000万円で買った小口化不動産の評価が最終的に400万~600万円ほどに下がる場合がある。富裕層によるタワーマンションの高級住戸などの取得や地主の賃貸マンション経営といった節税スキームは、中流層には難しかった。これに対して、資産価値が落ちにくい都心一等地の不動産を1口数百万円から買える小口化不動産は投資家の裾野がはるかに広く、資金が集まりやすい。ただし、リーマン・ショックのように市況が悪い場合は元本割れするリスクがある。不動産信託証券とも違うため、実物資産に近いため出口戦略が重要だ。小口化不動産は相続節税メリットを狙うため、相続前後に短期売買したりすると、当局から目をつけられる。そして、相続の発生時期は予想できないため、そのときの相続税制に依存する。節税目的で肥大化しつつある小口化不動産がどう扱われるか。そういえば、最高裁は借入金とマンション取得を組み合わせた極端な相続節税について、国税当局の課税を容認する判決を出した。多額の財産を背景として高齢者には異例の高額ローンを組んだ事例で、最高裁は「租税負担の公平に反する」と判断したからだ。愚生も判決を注目したが、節税スキームの骨格は一般的なものだけに、被告は判決に納得はいかないだろう。節税といっても、ハウスメーカーが地主層に薦める賃アパート経営の失敗などの例もある。現役世代への資産移転によって景気浮揚につなげる狙いなら、相続税の圧縮などは政府のご都合主義だ。シンガポール、豪州などは相続税がない。米国は基礎控除が大きく、ごく限られた富裕層しか課税されない。中流層に課税を広げた日本の相続税制は、「公平、中立、簡素」に照らして正しいのだろうか。ところで、中国のネット大手、アリババ集団を創業した馬雲(ジャック・マー)氏に東京で会った関係者は「ちょっと疲れたようすだった」と印象を語ったという。中共の怒りを買ったのは2年前の2020年秋だ。その馬氏が、半年近く東京で暮らしているという。習近平は「共同富裕」の名の下に、巨大なIT企業や富豪から富を剝がそうと目論んでいる。馬氏には同情したくなる。習近平は国有企業に大きな力を与え、経済のあらゆる分野に党のにらみをきかせる。これは当に毛沢東時代の計画経済と同じだ。
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